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2月5日のまにら新聞から

過去と同じ道たどるな

[ 687字|2001.2.5|社会 (society)|新聞論調 ]

前大統領の国外追放問題

 アロヨ新政権が直面している大きな問題の一つ、それはエストラダ前大統領の国外追放問題だ。

 アロヨ大統領自身は、出国するかどうかは前大統領の意志に任せる意向を示しているが、ピメンテル上院議員やカトリック司教協議会は一貫して国外追放を主張し続けている。前大統領を信奉するグループの「より所」をつみ取るため、国の安定のため、という。

 前大統領に対する訴追と懲罰はどうなるのか。出国をいったん許せば、前大統領が裁判を受けるために帰国する保証はどこにもない。犯罪人引渡協定を結んでいない国へ行けば、訴追の手からたやすく逃れることができる。

 マルコス元大統領は、フィリピンから八千キロも離れた米国ハワイ州へ逃亡したが、元大統領の支持派はアキノ政権に対する揺さぶりを続けた。たとえ前大統領を国外へ追放したとしても、現政権に対する攻撃が止むとはとても思えない。前大統領一派は、巨額の資金を保持しており、離れた場所からどのようなことでもやってみせるだろう。

 国外追放の代案として、前大統領の即時訴追を求める。現政権は、保釈適用外の罪状で前大統領を起訴し、刑務所へ収監すべきだ。不正蓄財に対しても直ちに差し押さえ命令を出せば、政情の不安定化を狙う動きを止めることができる。また、訴追は行政監察院任せにするのではなく、弾劾裁判所のような独立機関を新設すべきだ。

 十五年前のアキノ政変で得た教訓を今一度想起しなければならない。マルコス元大統領が不正に蓄財した国の財産は今も国民の手元に戻らず、マルコス一族はいまだ裁きを受けていない。国外逃亡を許すことで、過去と同じ道をたどってはならない。

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