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12月18日のまにら新聞から

ゆがんだ貧困対策

[ 545字|2000.12.18|社会 (society)|新聞論調 ]

死刑廃止と人権

 エストラダ大統領が十日に出した死刑囚百五人の減刑命令は各地で様々な反響を呼んだ。

 ラグダメオ大司教は大統領の狙いがカトリック教徒の取り込みにあることを指摘した上で、「もっと早くやるべきだったのだ」とだけコメントした。

 しかし、シン枢機卿は「尊い人の命を重んじ、死刑という野蛮な権力執行

を中止させるため祈りを捧げよう」と語り、大統領の発言を全面的に支持した。

 この祈りの声は大統領に届いたらしく、大統領は十二日、死刑制度廃止に向け議会に働き掛けていく見解を示した。

 「レイプや殺人などの凶悪犯罪者には極刑を」と発言し、死刑制度を支持していた大統領が、突然  意見を変えたのは政治的意図があってのことだろう。だが、死刑廃止の決断は間違いなく正しい。

 死刑が犯罪を抑止するというのは間違いだ、死刑制度は復しゅうと懲罰という原始的な感情に基づいたもので、決して理性的な制度ではない上に、死刑囚の多くは貧しい家庭に生まれ育っているのだ。死刑制度は政府の最もゆがんだ貧困対策と言える。

 それでは死刑制度に代わる刑罰は何か。犯罪者に罪を反省させる意味で、恩赦なしの禁固刑こそがふさわしい。

 また、凶悪犯罪を犯しても、金さえ払えばどうにでもなる不平等なわが国の司法制度の改革なども必要だ。

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