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5月7日のまにら新聞から

名 所 探 訪 カビテ州ノベレタ町 148

[ 942字|2000.5.7|社会 (society)|名所探訪 ]

今が塩づくりの最盛期

 海水を天日で蒸発させて塩を採取するフィリピン諸島の中でも、乾期の日照りが厳しいルソン島西海岸沿いのパンガシナン州からカビテ州までは昔から塩田の最適地。マニラ湾の湾口に面した、カビテ州カビテ市に近いノベレタ町もその一つで、今が塩づくりの最盛期だ。炎天下で農民が塩田にまぶしく光る塩をかき集めている。

 町には十軒の塩田農家がある。塩田は全部で十五ヘクタール、年間約百五十トンを生産している。

 作業は、二人一組みで行うのが昔からのやり方で、日が傾きかける午後三時ごろから始まる。

 まず一人が、四メートルほどの長さの「とんぼ」で生乾きの塩を「シャッ、シャッ、シャッ」と一気にかき集める。すると、もう一人が水を切りながら、真っ白に浮かび上がった塩を手際よくあぜに積み上げる。

 作業は手際のよさとタイミングが肝心。塩が乾燥しすぎると底にこびり付き、採れる量が少なくなるからだ。

 一日の仕事は、翌日のため、海水だまりで濃縮された海水を一センチほど塩田に張って終わる。

 カビテ州の沿岸部は、首都圏から約五十キロと比較的近距離にあるため、週末などには海水浴客が多数訪れる。その中には車から降りて、伝統的な製法の塩づくりを見物する人も少なくない。

 「小学生の息子にせがまれ車を止めた。昔ながらの作業を見ていると、何かほっとするね」。カビテ市の妻の実家を訪れる途中だというルベン・アキノさん(34)はこう言って、たばこに火を付けた。

 塩田での作業は、乾期を迎える年末から一日単位で繰り返される。そして晴天が続く四、五月が「書き入れ時」。ところが今年は、ラニーニャ現象の影響で乾期に入っても雨の日が多かっため、四月になって作業に取り掛かかった農家もあるそうだ。

 ノベレタ町に住むルシアーノ・サルバニアさん(66)は一日、三百ペソの日当で働いている。野球帽をかぶっただけで上半身裸。刺すような日差しも苦にならない様子だった。

 塩田に隣接する倉庫には、五十キロ詰めのナイロン製の塩袋が山積みされている。精塩業者は一袋二百五十ペソで買い取るという。

 六月を迎えて雨期に入ると、塩田は養殖池に変わり、テラピアなどの稚魚が放流される。乾期入りする前に成魚となって出荷されている。

(二階堂安宏)

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