「合憲性を徹底検討」 来年予算で大統領府
教育・福祉予算のカットで違憲との議論も出ている来年予算案について、大統領府「合憲性を徹底的に検討している」
制定が遅れている来年度の予算法案についてベルサミン官房長官は26日、「大統領と閣僚は現在、2025年予算法案の合憲性を徹底的に検討している」との声明を発表した。23年予算は12月16日、24年予算は12月20日といずれもクリスマス前に署名されており、今年も20日に署名される見込みだったが、年末までずれ込む見込み。来年予算は、教育省予算や比健康保険公社(フィルヘルス)の補助金がカットされたことで議論を呼んでいる。
合憲性を巡る論点の一つは、「国は教育を予算の上で最優先し、十分な報酬と職務への充足感の提供を通じ、最良の教育人材を確保する」と定めた現行憲法の14条5項と、教育予算カットとの整合性だ。上下両院協議会は、教育省への7486億ペソの予算案から約120億ペソ減額した一方で、公共事業道路省予算は2890億ペソの大幅追加を行い、過去最大の1兆1000億ペソに拡大。これが憲法の同条項に反するという議論だ。
また、フィルヘルスへの補助金削減についても、13条などに規定される社会正義条項に反するとして、労働団体が最高裁に違憲立法審査を請求する動きを見せている。
同予算案にはフィリピン経済学会も「教育予算削減は教育危機に取り組む現場を危険にさらし、福祉予算カットは飢餓と児童の栄養不足に拍車をかけ、政府の経済8優先事項とも整合しない」として、大統領に予算削減の撤回に取り組むよう要望書を提出。同学会は国家経済開発庁(NEDA)のバリサカン長官やジョクノ前財務相(現中銀政策決定委員)が歴代会長を務めてきた比経済研究の中心機関の一つだ。
大統領は憲法6条27項により、予算案の個別条項について拒否権を行使する権限を有する。しかし個別条項の無効化にとどまるため、拒否権によって予算の削減はできても、拡充は困難とみられる。大統領はその他にも、両院協議会の再招集を通じた修正審議要請、2024年予算の再執行という選択肢も持つ。
一方で、チャベス大統領報道長官は30日に大統領が予算法案に署名する見込みだと発表している。(竹下友章)