「より強硬な対応辞さず」 スカボロー礁で中国国防省
スカボロー礁で中国国防省「フィリピン側が挑発を続けるならより強固な手段を取る」
4日にサンバレス州西沖のパナタグ礁(英名スカボロー礁)へ定期巡視を行った比巡視船に対し、中国海軍艦が約270メートルの急接近するなどの「前例のない」(国家海洋委員会)危険操船を実施した事案について、中国国防省の呉謙報道官は先週末の定例会見で言及し、「中国の態度は明白であり、フィリピン側が挑発を続けるのなら、中国は一段階強硬な措置を取る。これは最後まで続くことになる」と発言し、さらなる報復的措置を警告した。
呉報道官は「仁愛礁(比名アユギン礁、英名セカンドトーマス礁)から、ホウテン礁(比名ロズル礁、英名イロコイ礁)、黄岩島(パナタグ礁)に至るまで、繰り返されてきた挑発行為によって、国際社会は誰が南シナ海で平和と安定を害し、うそをばらまいてきたのかを目撃してきた」と非難。その上で、「どこへ行くにもフィリピン船舶は甲板いっぱいに記者を詰め込んでいるが、本当の問題は、どちらがより多くの記者を擁しているかではなく、どちらがより正当かだ」と指摘し、「フィリピンの領土の範囲は一連の国際条約によって確定しており、その中に南沙諸島とスカボロー礁は含まれておらず、フィリピン自身もそれを認識している」とした。
それに対し、比沿岸警備隊(PCG)のタリエラ報道官(准将)は14日に公式SNSに声明を投稿。「中国はレトリックをさらにエスカレートさせ、自国の排他的経済水域(EEZ)で漁をする比漁民を追い出し、比政府を脅して漁民への人道支援を諦めさせようとしている」と非難した。
▽エスカレートの先は
マルコス政権における南シナ海緊張激化は、比が旧式揚陸艦を座礁させて実効支配を維持してきた南沙諸島アユギン礁を中心としていたが、6月には、船艇を衝突させ刃物を振り回す中国職員とのもみ合いの中、比海軍職員が親指を切断する事件が発生するまで状況がエスカレート。
それを受け、7月に両政府は緊張緩和に向けた「暫定合意」を取り結んだが、合意後は、比船より数倍多い中国船が監視する中での補給任務の実施となるなど、「紳士協定」に基づき補給を行っていたとされる以前より比の実効支配は弱まりをみせた。アユギン礁と同様の経過を他の岩礁もたどると、比側の海洋地勢への実効支配が薄らいでいくことにもつながりかねず、「補給任務やパトロールを継続する」と宣言するマルコス政権は困難な対応を迫られそうだ。
緊張が激化するスカボロー礁の領有権について、中国外務省は6月、「1898年の米西講和条約、1900年の離島譲渡に関する米西条約、1930年の北ボルネオ島とフィリピン群島との境界に関する米英条約などの国際条約では、南沙諸島や黄岩島は比領土に含まれていない」と主張。
一方で、「フィリピン地図の母」と呼ばれる「ベラルデ地図」(1734年)にはスカボロー礁とみられる岩が記されているほか、比政府は2009年制定の領海基線法で正式に同礁を領土と認定している。(竹下友章)