前大統領がクーデター示唆か 政府「断固として対処する」
ドゥテルテ氏が国軍にクーデターを示唆する発言。政府は「断固たる対応をする」と反発
サラ・ドゥテルテ副大統領の大統領暗殺発言を契機に緊張が高まる中、サラ氏の父であるドゥテルテ前大統領が25日深夜から翌日未明に開いた会見で「政府の統治が崩れており、マルコス(大統領)を正す者もおらず、緊急の対応策もない。唯一、軍だけがこの状況を正すことができる」と発言した。軍へクーデターを促していると取れる発言に対し、ベルサミン官房長官は26日、「前大統領が国軍にマルコス大統領に対するクーデターを起こすよう明確に呼びかけたことは衝撃だ」と非難し、「政府は断固として対処する」と宣言した。
同日、司法省のアンドレス次官は「扇動罪に抵触しかねず、刑事訴追され得る発言だ」との見解を提示。翌27日には、司法省がドゥテルテ氏に弁明を求める可能性があると述べた。
ドゥテルテ氏は今年1月にも「マルコス大統領が国民請願を通じた改憲を断行したら、父親と同じように大統領宮殿から追放されるだろう」と発言。クーデターをそそのかす発言ともとられ話題となったが、政府は静観した。しかし、よりクーデターを示唆する意味合いが強まった発言となった今回は、軍などに本格的な対応を求める姿勢を示した。
会見でドゥテルテ氏は、マルコス氏のコカイン使用疑惑を念頭に、「私は軍全体に問いたい。軍が憲法の守護者なら、あと4年間、麻薬依存者である大統領をいつまで支持するのか」と発言。軍の介入の必要性を訴えた上で、「軍が真の憲法の守護者かどうかは分からない。軍次第だ」とした。
ベルサミン官房長官はドゥテルテ氏の発言をクーデターの呼びかけと解釈した上で、「自分の娘(サラ氏)を大統領にするために、政権打倒を呼びかけるほど利己的な動機はない」と非難。「彼は自分の計画を達成するために、国軍に対し、服務宣誓の裏切りを求めるなどの行動に出るだろう」と警戒心をあらわにし、「殺人、騒乱、暴動などによる暴力的な手段で大統領の座を狙うことは受け入れられない」として「断固たる対応」を明言した。
ドゥテルテ大統領は会見の中で、軍だけでなく警察にも介入を呼びかけていた。国家警察のファハルド報道官は27日、「警察は憲法や当局に背くことを求める人々に左右されることはない」と宣言。警察は法律に基づく命令にのみ従うとし、警察職員に政治的騒ぎから遠ざかるよう求めた。
この問題について、比海軍のトリニダッド報道官は「一部のグループが偽情報を使って軍の指揮系統を弱らせようとしているにもかかわらず、指揮系統は損なわれず、安全だ」と発言。国軍のバディリャ報道官も「参謀総長が声明で述べたように、国軍は無党派でプロフェッショナル、そして団結した組織だ」と強調した上で、現時点で隊員の「忠誠心チェック」は不要との見解を示した。(竹下友章)