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9月29日のまにら新聞から

「今年内にも台湾有事 政治学者・エルドリッジ氏講演

[ 2076字|2024.9.29|政治 (politics) ]

ロバート・エルドリッヂ博士がマカティ市で講演。「台湾有事は今年12月にも発生する」と警告

講演するエルドリッヂ博士=28日、首都圏マカティ市アヤラモールサーキット内「ステーキハウス・アイアンマン」で竹下友章撮影

 国際安全保障国際会議出席のため来比中の政治学者ロバート・エルドリッヂ博士(エルドリッヂ研究所代表)が28日、日比ビジネスクラブ(屋良朝彦会長)の招待に応じ、首都圏マカティ市で「台湾の有事と日米同盟」をテーマに講演した。米国で大学卒業後、日本政府のJETプログラムを通じて来日、その後神戸大で修士・博士号を取得し阪大の准教授になるなど順調に日本でのアカデミックキャリアを重ねながら、2009年に教職を辞し政務外交部次長として沖縄米軍海兵隊入りするなど異色の経歴を持つ同氏は、東日本大震災時に在日米軍の「トモダチ作戦」の立案者としても有名。今年から台湾外交部フェローシップを通じて淡江大学客員研究員を務めている同氏は、「私の予想が外れることを祈っている」としながら、日米中台の情勢分析から、台湾有事が「今年12月にも発生する可能性がある」と警告した。

 ▽逆転した力関係

 「台湾有事があるかないかという議論は終わっており、いつ発生するかというステージに入っている」という同氏は、「中国は平和的であり、経済発展を優先している」というリベラル派にみられる主張、「中国には台湾侵攻を行う軍事力がない」「経済が破綻寸前だ」という右派・保守派にみられる主張に対し「これは意見、または願望だ」と指摘。「軍事アセットの比較からすれば、インド太平洋地域で中国はもはや米国より軍事的優位にあるのが事実。なのに台湾有事に対応するために十分な国際的連携は形成されておらず、台湾が国家として承認されていないため侵攻しても国際法上は『国内問題』として扱われてしまう状況にある」と説明し、その上で、「中国には台湾を武力併合する意思と能力があるが、今の米国には台湾を守る意思があったとしても能力がない」と明言した。

 インド太平洋に形成される日米豪印協力枠組み「QUAD」や米英豪安全保障枠組み「AUKUS」、そして日米同盟についても「台湾有事に対する準備はまだ何もできていない」との評価を示す同氏。米国大統領選との台湾有事との関係については、「中国を『敵』として外交関係を再定義したトランプ前大統領が大統領に返り咲けば、台湾有事への準備が進む可能性があるが、米軍の構造的問題を立て直すには時間がかかる」と説明。「中国からみたら、ほぼ準備ができていない今の内に行動に移すのが最善策」とし、「私が中国の戦略担当だったら、多くの(在日)米軍隊員が長期休暇で本国に帰っている11月下旬から(新政権が発足する)1月の間に行動を起こす。私なら12月下旬を狙う」と説明した。

 ▽ウクライナの再現

 具体的な軍事侵攻の方法については、「ウクライナへの軍事侵攻でロシアが行ったのと同様の行動を取る可能性が高い」と説明。台湾周辺での軍事演習の「常態化」を進め、軍事演習の延長としての軍事行動を取るシナリオを示した。

 また、「2022年に、米国務長官が『アフガンから撤退していなかったら、現在ウクライナに関与できなかった』と述べたが、これは、米国がいまや2正面作戦を遂行する能力がないことを認めた発言だ」と指摘。「論理的に言えば、いま米国はウクライナ戦争に関与しているから、台湾や南シナ海の有事には対応できないということになる」と警告した。

 その上で、地域の平和を維持するための最善の策として、「台湾の国家承認」の必要性を強調。「8年前の蔡英文政権発足時には20カ国以上あった承認国は、中国の外交攻勢でいまは12カ国まで減少した。台湾を国家承認していない国は、たとえ中国が台湾周辺で海上封鎖をしたとしても、国際法違反と言うことができない」と強調した。

 ▽日本の役割

 比米防衛協力強化協定(EDCA)に基づく米軍利用可能施設のルソン北部での増設や、米軍による中射程ミサイルの持ち込みなど、台湾有事を念頭に入れているともいわれる動きが比で進んでいることについては、「何もしないよりはいいが、遅すぎる」と厳しい評価。一方で、比が複数国の軍隊との軍事演習・海洋共同活動を拡大していることについては、「賢いやり方。過度に米国依存をせずに、常にどこかの国の部隊がフィリピンにいるようにしている。これは世界の国々がフィリピンを支援していることを中国に見せるという点でも意味がある」と評価した。その上で、「フィリピンが推し進める多国間安全保障連携の鍵は日比関係となるだろう」とし、地域の安全保障に関する日本の役割の重要性を強調。「裏を返せば、日本がより重い責任と負担を抱える必要に迫られる」とした。 エスコダ礁(国際名サビナ礁)など南シナ海の権益維持のため中国と対峙(たいじ)する比の姿勢については、「フィリピンは抵抗の姿勢と強い愛国心を示しており、世界中に勇気を与えている」と称賛。その上で、「南シナ海で中国に立ち向かっているのは、フィリピンが日本から政府開発援助(ODA)を通じて調達した船。日本人は南シナ海問題をもっと当事者意識をもって見るべきだ」と強調した。(竹下友章)

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