「平和的選挙に協力を」 和平28周年式典で大統領
MNLF和平28周年でマルコス大統領が来年のバンサモロ自治政府発足に向けた選挙の平和的実施への協力を呼びかけ
モロ民族解放戦線(MNLF)とフィリピン政府が最終和平合意に調印して28年目を迎えた2日、マルコス大統領は大統領府でMNLF関係者らを招いて式典を開いた。式典には、現在ミスアリ派、セマ派の2派に分裂しているMNLFから双方の代表者が参加。来年の選挙を通じた自治政府発足を見据え、それぞれの立場から和平プロセス完遂への決意を表明した。
マルコス大統領はスピーチで、父・故マルコス元大統領政権下の1976年にリビアの仲介でMNLFと結んだトリポリ協定に触れ、「同協定から1996年の最終和平合意までの道のりは長く困難だった」と回顧。「しかし、恒久の平和を求めるわれわれの熱意と決意が勝った。2014年にはバンサモロ包括合意に至り、2018年のバンサモロ基本法制定を実現した」と述べた。
その上で、「内乱の最大の懸念地」としてスールー、バシラン、タウィタウィ各州を挙げた上で、治安維持に対するMNLFの協力に感謝を表明した。
来年に初めて実施されるバンサモロ自治政府正式発足選挙については、「平和的で、秩序正しく、かつ信頼できるかたちで確実に実施するため協力してほしい」と呼びかけた。
現在、バンサモロ暫定統治機構(BTA)で労働雇用大臣を務めるMNLFセマ派代表のセマ議長は、1996年最終和平合意を「長く、曲がりくねった困難な交渉の末たどりついた。これが多くの血を流した武力闘争を放棄するというわれわれの決断につながった」と称賛。さらに、「故マルコス元大統領が締結したトリポリ協定がなければ、今日のバンサモロ暫定自治政府もない。同協定は全ての和平合意の母だ」と述べた。
また、マルコス大統領がこれまで署名された全ての和平合意を完全に実施する意向を示していることについて聞かれた際は、「それがまさにわれわれが望んできたことだ」と歓迎の意を示した。
▽リーダー下ろしより支援を
一方、MNLFミスアリ派からは、創設者ミスアリ議長の代理として、アブドゥルカリム・ミスアリ副議長が出席。会見で「MNLFは民族自決のために長年にわたり戦ってきた。新しいフィリピンは宗教、民族を問わず全てが平等だ。それこそが、MNLFの闘争の目的だった」と語り、MNLF以外の和平合意に関する政府への協力については、「全ての和平を完全実施するため、全てのアイデアがわれわれにも共有されるべきだであり、もっとも現実的な方法について話し合われるべきだ。時間が掛かるが、不可能ではない」と積極的な姿勢を示した。
比政府の取り組みに対しては「和平プロセス担当大統領顧問、和平・和解・統合担当大統領顧問と8年近く折衝してきて、言葉だけでなくその行動をみてきた。MNLFは心配も疑いもしていない」と肯定的に評価。「ともするとわれわれはリーダー下ろしに動きがちだが、いまは大統領を支持すべきとき。ガルベス和平・和解・統合担当大統領顧問にもわれわれはフィリピンの南の国境の守護者だと伝えた」と述べた。
MNLFは2001年に分派。昨年9月には、両派はガルベス氏の仲介のもと、1996年の最終和平合意を完全に実施することで初めて合意した。MNLFは、BTA議会をモロ・イスラム解放戦線(MILF)と共に構成。MNLF創設者ヌル・ミスアリ氏の長男アブドゥルカリム・ミスアリ氏は、妹のヌレダ氏と共に2022年に大統領からBTA議員に任命されている。(竹下友章)