エスコダ礁の比巡視船孤立 PCG補給任務を中国が妨害
エスコダ礁を監視しているPCG「BRPテレサマグバヌア」への補給任務を中国船団が阻止。食料備蓄が危機的状況に
フィリピン沿岸警備隊(PCG)のタリエラ報道官(推将)は26日、公式X(旧ツイッター)で、南シナ海で中国による新たな人工島造成の兆しが見つかっているエスコダ礁(中国名・仙賓礁、国際名サビナ礁)を監視するため長期停泊している同隊の97メートル級巡視船「BRPテレサマグバヌア」(日本供与)に対する食料・必需品の補給任務を行おうとした44メートル級PCG巡視船2隻が、中国の海警局船や中国海軍、民兵船などからなる計40隻の船団による妨害を受け、補給任務が阻止されたことを明らかにした。比の排他的経済水域(EEZ)内にあるエスコダ礁周辺で展開されている中国船の数が最近急増しており、同礁を監視するため現地に留まっているテレサマグバヌアの孤立がより鮮明となっている。
同報道官は27日の記者会見で、巡視船「BRPテレサマグバヌア」への補給が1週間以上にわたり滞っており「(隊員たちの食料備蓄などが)すでに危機的なレベルにある」と懸念を表明した。
タリエラ報道官によると、同巡視船への最後の補給は8月第2週か3週に実施されているが、その後、周辺で展開する中国船の数が急増しているという。ちなみに26日のPCG巡視船2隻による補給任務を阻止した中国船団の構成は、海警局船6隻、中国海軍船3隻、そして民兵船31隻だったという。
また、同報道官は比沿岸警備隊による同僚船への補給任務を「過剰な数の中国船団が阻止したのは今回が初めてだ」と明らかにした。
海警局船を含む多数の中国船団による比の補給任務に対する大掛かりな妨害はこれまで、南シナ海のアユギン礁に座礁させてある比海軍艦に対する比海軍の補給任務が主なターゲットとなってきた。今回は比沿岸警備隊による同僚船への補給任務も妨害対象となっており、中国船の南シナ海への展開が増強されていることが分かる。
南シナ海では19日未明にも、比が実効支配するパタグ島(英名フラット島、中国名・費信島)、ラワク島(中国名・馬歓島)への補給任務に向かっていたPCGの44メートル級巡視船「ケープエガニョ」(日本供与)がエスコダ礁から南東23カイリの海上で、海警局船「海警3104」による危険操船に遭遇し、右舷側で衝突、甲板に約13センチの穴が開いた。また、同日午前3時40分にも、44メートル級巡視船「BRPバガガイ」(日本供与)が海警局船「海警21551」により左右両舷から2度衝突され、左舷予備室に縦76センチ、横90センチの穴が開くなど「過去最大の損害報告」(PCGタリエラ推将)となっていた。
エスコダ礁周辺では25日にも比漁船への補給任務に就いていた比漁業水産資源局(BFAR)の漁業取締船「BRPダトゥ・サンディ」が中国海軍艦と海警局船による妨害を受け、海警局船がBFAR船に衝突している。この事件を受けて、中国海警局の甘瑜報道官は「比船は中国の許可なく仙賓礁(エスコダ礁)付近の海域に不法侵入した」とし、「比船は警告を無視して海警局船に衝突した。責任は全面的に比側にある」との声明を出している。(澤田公伸)