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8月20日のまにら新聞から

「過去最大の損傷」 比中巡視船衝突、舷側に大穴

[ 1121字|2024.8.20|政治 (politics) ]

中国海警局船が比巡視船(日本供与)に意図的に衝突。船体に90センチの穴が空く「過去最大の損傷」被る

比巡視船「BRPバガカイ」の舷側に空いた穴=19日、PCG公開

 南シナ海で19日未明、フィリピンが実効支配するパタグ島(英名フラット島、中国名・費信島)、ラワク島(中国名・馬歓島)への補給任務に向かっていた比沿岸警備隊(PCG)の巡視船が中国海警局船から衝突され、左舷側に幅約90センチの穴が空くなど大きく損傷した。海警局船によるPCG巡視船妨衝突事件では「最大の損害報告」(PCGタリエラ准将)となった。

 比国家安全保障会議のマラヤ事務局長によると、同日午前3時24分、44メートル級巡視船「BRPケープエガニョ」(日本供与)が比排他的経済水域(EEZ)内のエスコダ礁(国際名サビナ礁、中国名・仙賓礁)から南東23・01カイリの海上で、海警局船「海警3104」による危険操船に遭遇。その結果、右舷側で衝突し、比船甲板に約13センチの穴が空いた。

 さらに午前3時40分、44メートル級比巡視船「BRPバガガイ」(日本供与)がエスコダ礁から21・3カイリ南東の海上で、海警局船「海警21551」により左右両舷から2度衝突された。

 衝突後、BRPバガガイの左舷予備室には縦76センチ、横90センチの穴が空き、右舷の側には30センチのへこみができた。

 マラヤ氏は「両巡視船は損傷を受けながら補給任務を完遂した。さらなる緊張激化を避けるため、海上衝突予防法条約と自制を求める」と発表した。

 ▽アユギン礁に接近

 一方、中国海警局の甘瑜報道官は早朝に「比巡視船4410(BRPバガカイ)が中国に不法侵入した」と発表。「同船は南沙諸島の仙浜礁(エスコダ礁)付近の海域で阻止された後、中国の度重なる警告や航行規制にもかかわらず、再び中国の南沙諸島の仁愛礁(アユギン礁)付近の海域に不法侵入したため、取り締まりを行った」とした。さらに、比の「BRPバガカイ」が進路を右に変え、「海警21551」に衝突したとする映像を公開した。

 海上衝突予防法条約の第15条では、船舶が互いに針路を横切る場合で衝突の恐れがあるときは、他の船舶を右舷側に見る船舶は、他の船舶を避けねばならないと規定しており、条約違反をしているのは比側だと印象付ける意図がありそうだ。

 アユギン礁への補給を巡っては先月に両政府間で暫定了解が結ばれており、前回同了解に基づき事件なく補給が実施された際には、事前に「情報交換」が行なわれたとマナロ外相は説明していた。

 8日にはサンバレス州西沖のパナタグ礁(英名スカボロー礁)で中国戦闘機による比空軍機に対する初のフレア(発光弾)発射事件が発生。それに今回の今回の事件が続き、緊張緩和のための了解を取り結んだ後も、緊張の激化が止まっていないことが露呈された格好だ。(竹下友章)

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