中国に正式抗議 初のフレア発射で
初の中国戦闘機によるフレア発射事件に対し、フィリピン政府は抗議の口上書を中国政府に送達
パナタグ礁(英名スカボロー礁)近海上空で8日に中国戦闘機が定期哨戒中のフィリピン空軍輸送機にフレア(発光弾)を発射した事件について、外務省のダザ次官は13日、中国政府に抗議の口上書を送達したと発表した。マナロ外相は同日開かれた下院予算委員会で、抗議の内容について、「中国の危険行動を強く非難するとともに、比空軍機側は中国機をいかなる危険にもさらしておらず、わが国の空域で活動を行っており、主権・管轄権侵害も犯していないことを明確に伝えた」と説明した。
中国軍南部戦区は「比航空機が違法に領空侵犯してきたため、警告し排除した」と発表していた。
口上書送達以外の対応について、マナロ外相は「われわれは既に中国大使館職員とも会っている。比中2国間協議メカニズムでもこの問題を取り上げ、外交を通じた問題の平和的解決に努力する」との方針を説明した。
先月南シナ海の緊張緩和に関する暫定合意を結んだばかりのタイミングで起こった事件に、マルコス大統領やマナロ外相は失望や懸念を表明している。ダザ次官は、「暫定了解は南シナ海アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)のみに適用されるものだ」と説明。その上で、「比は西フィリピン海(南シナ海)で緊張緩和アプローチを採用している。比政府は紛争の平和的解決にコミットする」とした。
▽初めての事件
比国軍の南シナ海問題報道官を務めるロイビンセント・トリニダッド少将は13日、「比空軍機が南シナ海上を飛行している際に中国軍基地から発射された前例はあるが、飛行機からからフレアを発射されるのは初めての事態だ」と説明。
その上で、南シナ海における中国の行為について、「海であれ、空であれ、こういった行動は不法だ。かれらは威圧的、攻撃的、欺瞞(ぎまん)的であり、国際法が支配する国際社会にふさわしくない」と批判した。
パナタグ礁はアユギン礁と並び、中国による放送砲発射事件や比中船舶衝突が発生するなど緊張が高まっているエリア。同礁は以前、フィリピンが実効支配していたが、2012年に比海軍艦と中国法執行船によるにらみあい事件が発生。2カ月後に比船が撤収した後、中国が同礁を占拠した。(竹下友章)