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6月20日のまにら新聞から

サラ氏、2閣僚ポスト辞任 マルコス政権と離別へ

[ 1446字|2024.6.20|政治 (politics) ]

サラ・ドゥテルテ副大統領が教育省を辞任し、閣僚メンバーから外れる。マルコス政権離別へ

教育相辞任を発表するサラ副大統領=19日

 サラ副大統領は19日、兼任していた教育相を辞任すると発表した。同時に、共産主義勢力との武力紛争を終わらせる国家タスクフォース(NTFーELCAC)の共同議長も辞任した。副大統領の辞任は表明していないものの、前政権期のロブレド前副大統領と同様に閣僚から外れる。マルコス現政権とドゥテルテ家の亀裂が深まる中、10月に控える2025年中間選挙を前に、現政権離別の一歩を本格的に踏み出した。

 辞任理由についてサラ氏は会見で「弱さ故に辞めるのではなく、教員と児童・生徒の福祉を懸念するが故に職を辞する。教育相でなくなっても、フィリピンの教育の質向上への取り組みは続け、一人の母として教師・生徒・児童の福祉向上を支援し続ける」とだけ述べた。

 ▽どのポストを狙うか

 次期大統領に最有力視されてきたサラ氏。28年の統一選を見据え、その前哨戦となる中間選挙で国会議員初当選を目指すか、または牙城のダバオで知事になり地盤固めに専念するか、その動向にも注目が集まる。

 ダバオ市長を務める弟セバスチャン氏と、ダバオ市1区選出の弟パオロ下院議員は共に来年任期を迎えるため、どちらかの後任として立候補するというのが最も手堅い選択肢だ

 しかしそれだけでなく、「次期大統領」を臨む地位である上院議員を狙う道もある。上院議員任期中に大統領選に立候補することは法律上禁止されておらず、次期上院議員についての世論調査で上位の常連である父・ドゥテルテ前大統領からの全面的な支援があれば、当選を射程内に収められるからだ。

 また、もし知事を目指すのであれば、ダバオ市の位置する南ダバオ州が有力とみられる。同州は、ドゥテルテ元大統領の盟友ダグラス・カガス前知事の娘イボンヌ氏が知事職を継いでいる。

 ▽ユニチームの崩壊

 22年の統一選挙では、「ユニチーム」の看板の下、世論調査トップを独走し続けていたサラ氏の国民的人気を味方につけたマルコス氏が圧勝した。この時はマルコス氏がサラ氏の人気に便乗したという色合いも強く、政権発足後も大多数の与党から支持を集める2人の結束はたびたび強調された。

 だた、昨年から両者の関係に徐々に隙間風が吹き始める。マルコス氏のいとこで「側近」のロムアルデス氏が議長を務める下院で、副大統領室・教育省の多額の機密費問題で集中砲火を受けたほか、サラ氏の「後見役」だったアロヨ議員(元大統領)が副議長を解任される。サラ氏はこの政治劇の中、ロムアルデス氏が党首を務める最大与党ラカスCMDを離党している。

 さらに、昨年末から新人民軍への恩赦、国際刑事裁判所(ICC)への復帰検討を巡る議論、ドゥテルテ家を後援する新興宗教の教祖への起訴など、次々マルコス氏との対立点が噴出した。

 今年に入り、父のドゥテルテ前大統領、弟のセバスチャン市長は、それぞれクーデター示唆、辞任要求など現政権への過激な攻撃を開始。マルコス、ドゥテルテ両家の関係の冷え込みは決定的となり、最近は、サラ氏が公の場に姿を見せることも珍しくなっていた。

 マルコス大統領は5月から、自身が名誉党首を務める比連邦党(PFP)と、ラカスCMD、民族主義者国民連合の2主要政党との同盟関係を締結するなど、自身を中心に与党の再編を加速。さらに同月には、サラ氏と同じミンダナオ地方を地盤とするマニー・パッキャオ元上院議員(元ボクシング6階級制覇王者)より、PFPから立候補する約束を取り付けている。(竹下友章)

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