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6月19日のまにら新聞から

補給任務で8人負傷 中国の妨害さらに激化

[ 1109字|2024.6.19|政治 (politics) ]

17日のセカンドトーマス礁への補給任務で中国が比ボートを一時接収。比職員8人が指切断などの負傷

 17日朝に南シナ海アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)で発生した中国によるフィリピンの補給任務妨害について、国軍のセルセス・トリニダッド報道官(大佐)は18日、まにら新聞に対し「任務中に海警局船が意図的に高速で衝突してきたため、隊員が重症を負った」と明らかにした。負傷した隊員は直ちに現場を離れ、適切な治療を受けたとしている。現地報道は、補給任務に当たっていた職員少なくとも8人が負傷し、1人は指を切断したとしているが、比政府は被害の詳細を公表していない。

 パラワン州の地元メディア「パラワンニュース」によると、中国側は比の高速ゴムボートに穴を開けるなどして徹底的に妨害した。接近した中国船の乗員が比職員の持つ銃をつかんだ時に、お互いの船艇同士が衝突。その際に銃を持っていた海軍特殊部隊の隊員1人が指に重傷を負った。また、中国船の乗員が比の高速ボートに乗り込み、銃器8丁を接収した。比の補給船は一隻もアユギン礁に到達できなかった。

 さらに、比側の主力船は全方向から中国船に取り囲まれた後、衝突を受け、さらに離れた場所まで中国船によりえい航された。比船がえい航させられたことは、比政府が17日夜に認めている。

 ABSーCBNニュースは18日、関係者の証言として比側の負傷者は8人以上だと報道。GMAニュースは比の高速ボートが中国に一時拿捕され、交渉の後に解放されたと報じた。海警局の甘羽報道官は「比補給船1隻と高速ボート2隻が仁愛礁(アユギン礁の中国名)に侵入しようとしたため、海警局は臨検を実施し、排除した」と発表。中国政府系の環球時報は「海警法新規則が発効して初めての法執行例となった」と報じた。

 国務省のミラー報道官は、米時間17日の会見で、「アユギン礁で何が起こったのか」との質問に「中国は、放水砲を発射し、衝突し、進路妨害し、(比船を)えい航した。それにより比船は損傷を受け、比職員の命が危険にさらされた」と答えた。

 緊張が激化する南シナ海情勢に対し、比米両国政府は「比職員の死亡」を比米相互防衛条約発動のレッドラインに設定。今回、中国の実力行使はレッドラインには達していないが、比職員が重傷を負うところまで悪化した。

 アユギン礁に配置された比職員への補給に関し、中国はこれまで「人道的配慮」として水や食料に関して容認してきたが、今回完全に妨害されたことで、「兵糧攻め」が本格的に始まったことになり、同礁の比の実効支配が窮地に追い込まれた格好となった。

 アユギン礁は領海を持たない低潮高地。2016年の南シナ海仲裁裁判で比の排他的経済水域(EEZ)だと認められている。(竹下友章)

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