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6月18日のまにら新聞から

アユギン礁で再び衝突 中国軍・海警・民兵が妨害

[ 1115字|2024.6.18|政治 (politics) ]

セカンドトーマス礁でフィリピンの補給船と中国船がまた衝突。海警局「責任は全てフィリピン側にある」

 中国海警局は17日、南シナ海アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)で、同礁近海に接近したフィリピンの補給船が同日午前5時59分に中国船舶と衝突したと発表した。中国外務省は午後の会見で、比の補給船1隻が、高速艇2隻と共に「建設資材を搬入しようとしていた」と発表。海警局が「警告の後に比船舶を強制的に排除した」と報告した。海警局側は「中国の厳正な警告を無視し、海上衝突予防法条約に違反し、プロではない方法で、正常に航行する中国船に比船舶が衝突した。責任は完全に比側にある」と非難した。

 ▽補給に失敗

 比国家安全保障会議(NSC)は同日午後8時すぎに発表した声明で、「中国海軍、海警局、民兵船が衝突などの危険で違法な行動を行ったため、任務は中断した」と報告。その上で「中国海上部隊の攻撃的で向こう見ずな行動にもかかわらず、比職員は自制心とプロフェッショナリズムをもって緊張激化を回避し、任務に臨んだ」として任にあたった職員をたたえた。

 テオドロ国防相は声明で、「比国軍は中国の危険で向こう見ずな行動に立ち向かう」と宣言。「中国の行動が南シナ海の平和と安定に対する真の障害であることが国際社会に明らかになったはずだ」としたが、事件の詳細は説明しなかった。

 船舶自動識別装置(AIS)を通じて南シナ海動向を分析しているスタンフォード大のレイモンド・パウエル氏(元米空軍大佐)はX(旧ツイッター)で、「海警局が『規制措置』という言葉を使うときは、通常は放水も行っている」と指摘。衝突した中国船を「複数の正体不明の中国船舶」とした。

 また、衝突事故の後、午前8時ごろに比沿岸警備隊(PCG)の44メートル級巡視船BRPバカガイ(日本供与)が民兵船「瓊三沙漁00103」(60メートル級)から同礁の南東20カイリで進路妨害に遭っていると報告。そのほか、少なこともAISをオフにした海警船が3隻同礁周辺に展開していたとした。

 アユギン礁は、西隣のミスチーフ礁(比名パガニバン礁)の支配が95年に中国に奪われたことを受け、比海軍が99年に旧式揚陸艦を意図的に座礁。そこを詰め所とすることで比は実効支配を守ってきた。だが現在周辺には海警局の巡視船や海上民兵船が展開し、比が補給任務を実施するたび妨害する状況。

 先月は空からの物資投下が試みられたが、一部を海警局が強奪。比配置職員の救急搬送も妨害されていたことが今月始めに公表された。中国外務省は今月、「水や食料など人道支援物資の搬入であっても、事前通知をしなくては許可しない」と一方的に宣言している。今回の補給は、中国海警法新規則が15日に発効して初の任務。(竹下友章)

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