比日米巡視を計画 中国の新規則施行でPCG
中国海警局の新規則施行念頭に比沿岸警備隊長官「南シナ海で日米と合同巡視を計画」
フィリピン沿岸警備隊(PCG)のガバン長官は5日、今月15日から「不法越境者」などを最大60日拘束できると定めた中国海警局の新規則が施行されることを念頭に、南シナ海における公海上で、比巡視船に日米の海保機関職員が乗り込む形での合同巡視を実施する案があることを明らかにした。
同長官は4日には、米沿岸警備隊が比の排他的経済水域(EEZ)における比の主権的権利保護を支援するため、北太平洋警備隊を派遣することも明らかにしている。
シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で1日、初となる比日米3カ国の海保機関の長官級会合が開かれており、3カ国の海上共同巡視や訓練の計画についても議論が進められたとみられる。
4月の比日米首脳会談後に採択された共同声明では「今後1年以内に、比日米の海保期間がインド太平洋で合同訓練その他の海上活動を実施する」こと、および「米沿岸警備隊によるインド太平洋での巡視に、海保・PCG職員を迎える」ことが明記されていた。南シナ海における中国の圧力強化を背景に、比日米・比米・日比での海上保安協力が一層加速しそうだ。
南シナ海では昨年から、アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)とパナタグ礁(英名スカボロー)で海警局による放水、衝突事件が発生。4日には、先月19日に比国軍によるアユギン礁への航空補給物資が、比軍の詰め所の座礁艦まえ10メートルの距離に接近した海警局の高速ボートにより強奪されていたことが明かされた。
5月24日には、比で「モンスター」といわれる世界最大巡視船の「海警5901」がスカボロー礁近海を巡視している。
▽中国艦が倍増
比海軍は5日、先月28日から今月3日かけ、南シナ海で比が海洋権益を持つ海域内に11隻の中国海軍艦を観測したことを明らかにした。前週に観測されたのは5隻であり、1週間で2倍以上に増加。また、海警局巡視船9隻、民兵船105隻が観測された。
これに先立ち比海軍は、中国海軍が2~3日にかけ、南シナ海エスコダ礁(国際名サビナ礁)周辺で軍事演習を実施したことも発表。「中国軍は比のEEZ内で独断で軍事演習を行う権利はない」と非難した。
▽ASEANに提起を
比EEZの複数箇所で中国との緊張が高まる中、エスクデロ上院議長は5日、西フィリピン海(南シナ海内で比が権益を有する海域)における中国の「侵略行為」を「東南アジア諸国連合(ASEAN)に提起するのも選択肢だ」と提言した。
南シナ海は比のほか、ベトナム、マレーシア、ブルネイがEEZを主張。また、インドネシアもカリマンタン島西のナトゥナ諸島周辺に国連海洋法条約(UNCLOS)に則ってEEZを主張しており、これらは中国が主張する「十段線」の権益主張と対立している。(竹下友章)