海警法新規則を「非常に懸念」 比初の防衛会議講演を前に大統領
比首脳として初のシャングリラ会合演説を前にマルコス大統領が中国海警新規則に強い懸念を表明
マルコス大統領は29日、中国が今月公布した「不法侵入」容疑者などを最大60日拘束できることなどを定めた海警法の新施行規則について言及し、「これはフィリピン国民を逮捕すると脅迫する政策。状況のエスカレートであり、非常に懸念している」と述べた。
南シナ海アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)やパナタグ礁(英名スカボロー礁)で比中の緊張が激化する中で、「相違点の対話を通じた平和的管理のため、水面下の交渉を行っているか」との質問には、「もちろんだ」と断言。
「どうした取り組みが実を結ぶか分からない以上、全てのルートを試す必要がある。トップレベル、大臣レベル、次官レベル、民間レベルなど、あらゆる方法を試す」とし「最優先課題は、放水砲の発射、レーザー照射、障害物設置などの攻撃的な行為をやめさせることだ」と強調した。さらに、二番目に重要なこととして、「比の漁民が漁業できる環境を確保すること」とした。
▽防衛会議で初の基調演説
大統領は31日、シンガポールで、英国国際戦略研究所が主催する、アジア最大級の防衛フォーラム「アジア安全保障会議」(シャングリラ会合)で比大統領として初の基調演説を行う。講演には岸田首相のほか、シンガポールのリー・シェンロン前首相、インドのモディ首相、豪州のアルバニージー首相らが出席する予定だ。
2月に国賓訪問した豪州での議会演説では、中国との海洋問題を念頭に、「比は1942年当時のように平和を脅かす行動に対する最前線に身を置いている」「われわれは決して降伏しない」と強いメッセージを打ち出した大統領。その時以上に比中の緊張が激化、複雑化しているこのタイミングに、マルコス大統領が世界の国防相や軍トップが集う同会合で、どのようなメッセージを発するかには、世界的に注目が集まりそうだ。
▽「世界的に共通の慣行」
マルコス大統領の発言を受け、中国外交部の毛寧報道官は29日、「海警法の新施行規則は海警局の法執行プロセスを標準化し、海洋秩序を保つためのものだ」と定例会見で強調。「これは世界的に共通する慣行であり、不法行為を行わない限り、個人や団体が懸念を持つ必要はない」と説明した。
「エスカレート」発言については、「状況をエスカレートさせているのは中国でなく、フィリピンだ」と反発。一方で、「比との対話のドアは開いている」とも述べながら、「どんなものであれ、対話を通じて合意されたものは、行動が伴わなといけない」とし、「紳士協定」問題を念頭に釘を刺した。(竹下友章)