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5月7日のまにら新聞から

「外敵による侵略を想定」 上陸迎撃実弾演習を実施

[ 1641字|2024.5.7|政治 (politics) ]

バリカタンで「外敵の侵攻」を想定した上陸迎撃実弾演習実施。ATMOSやジャベリン、榴弾砲で標的を撃沈し「外敵」を抑止

(上)105ミリ榴弾砲が着弾して上がる水柱。(中)最初の砲撃を行った米軍の155ミリ榴弾砲。(下)インタビューに応じる米海兵隊第一遠征軍のマイケル・セダホルム司令官=6日、北イロコス州ラワグ市で竹下友章撮影

 北イロコス州ラワグ市の南シナ海に面する砂丘地帯で6日午前、先月22日に始まった比最大の合同軍事演習「バリカタン」の目玉となる、「外敵」からの水陸両用車による侵攻を想定した迎撃訓練が実施された。訓練には、米海兵隊から第3海兵遠征軍第3海兵沿岸連隊(MLR)の第3沿岸戦闘チーム、比陸軍から海兵大隊第8上陸チームが参加。約200人規模で実施した。

 米海兵隊の海兵沿岸連隊(MLR)は、中国の接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略に対抗するため2020年代に入って新設された部隊。敵の攻撃圏内にあっても小さな単位で迅速に行動することで的を絞らせず、対艦・対空攻撃能力を効果的に使用することで沿岸部での優勢を確保する。また、離島に分散展開することを意図した部隊でもあり、米海兵隊ブライアン・ブロック中佐はまにら新聞に対し、今回演習を行った防衛作戦は「いかなる沿岸にも適用でき、特に離島では確実に適用できる」と述べた。

 今回の演習では、水平線上から迫る「侵略軍」を想定したターゲットに対し、両軍はトラック搭載型155ミリ榴弾砲システム「ATMOS」、歩兵携行式多目的ミサイル「ジャベリン」、105ミリ榴弾砲、50口径重機関銃を投入。各地点に分散した少数部隊が使用した。

 ▽砂丘にとどろく轟音

 実弾演習の舞台となったのは、約5キロの海岸線に広がる砂丘地帯「サンド・デューンズ」。砂丘の上から展望すると、360度砂漠の中、遠くに点在する箱庭ミニチュアのような軍テントや軍用車が目に飛び込む。さながらオープンワールドのゲームの世界に入り込んだようだ。

 演習場は午前7時には既に炎天下。演習開始予定は午前8時だったが、最初の砲音がとどろいたのは午前8時55分ごろだった。口火を切ったのは米軍の155ミリ榴弾砲。灼熱の陽に灼(や)かれながら待ちかねた一発に、記者団からは新年の花火になぞらえ「ハッピーニューイヤー」と歓声が上がった。

 同榴弾砲は、記者団の観測場所から少なくとも数百メートル離れた場所に配備。発射されるとまず榴弾砲から大きな硝煙が巻き上がり、その後1~2秒遅れて空震とともに砲音が伝わってくる。それに榴弾が空を放物線に切る音が続き、水平線上に水柱が上がる。狙いは水平線上に確認できるかできないかの最も遠い標的だ。

 続いて、別の位置に展開している比陸軍の105ミリ榴弾砲が炸裂。155ミリより距離の近いターゲットを標的に次々水柱を上げていく。

 さらに海岸線に近づいた標的に対しては、ジャベリンと50口径機関銃が使用された。記者団のいる砂丘からは視認不可能だったが、複数基の機関銃の銃声が交差する中、耳をつんざくジャベリン発射時の轟音(ごうおん)が海岸に響いた。

 

 ▽「侵略」を抑止

 迎撃訓練を視察した米海兵隊第一遠征軍(本拠地・カリフォルニア州)のマイケル・セダホルム司令官(中将)は、演習後の会見で「演習は成功に終わり、結果にはとても満足している」との声明を発表。その上で、今回の演習の主旨は「外敵による侵略を想定したものであり、南シナ海における島嶼防衛にも間違いなく役に立つ」と説明し、訓練で実力を示したことは「比に対する水力両用上陸への抑止にもなる」とした。

 演習場所は台湾南端から約260カイリ。台湾南海域を、今回初めて米軍による配備訓練が行われたスタンダードミサイル6(SM6)の射程(300カイリ)内に収める位置だ。

 同地点を演習場所にした理由について、セダホルム司令官は「地形として演習に適し、自治体の協力も得られたため」とし、台湾との近接性とは無関係だと説明。演習は「特定の第三国を念頭に入れたものではない」と強調した。

 上陸迎撃演習中、比沿岸警備隊(PCG)のルソン北西本部は、日本供与のメートル級巡視船BRPメルチョラアキノと同44メートル級BRPマラパスクアを配備し、演習エリア内の警備を行った。(竹下友章)

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