「見返りはEDCA」 米国の支援策に駐米比大使
米国が比軍に25億ドルの無償軍事支援を提供へ。「見返りは米軍利用可能施設に関する協力拡大」と駐米比大使
ホセマヌエル・ロムアルデス駐米フィリピン大使は28日(比時間)、出演した米国のラジオ番組で、米国は比国軍の近代化に対し2029年までに25億ドル(約3950億円)の無償援助を行う見通してあることを発表した。米国側は「見返り」として「防衛協力強化協定(EDCA)に関する協力を求めている」と明らかにした。
同大使によると、同資金は比沿岸警備隊(PCG)の近代化にも活用可能で、海軍、PCGの近代化のほか、空軍の戦闘機の追加調達が優先される見込み。現在、同大使はテオドロ国防相と調達装備品リストを作成するための調整を行っているとした。
同援助法案は、元駐日大使のウィリアム・ハガティー上院議員(共和党)とティム・ケイン上院議員(民主党)が4月10日に提出。2029年までに対外軍事資金供与(FMF)の枠組みを通じ、毎年5億ドルの無償資金援助を行う内容だ。
「米国は資金供与の見返りを求めているか」との質問に、ロムアルデス大使は「フリーランチなどというものはない」と断言。「米国側が求めているものは、EDCAと訪問軍地位協定(VFA)に関するものであり、『対応能力』のため特にEDCAを優先している」とした。
EDCAは比国内に巡回駐留に基づく米軍施設の設置を可能とする。現政権では昨年マルコス大統領が4カ所の増設を承認し、合計9カ所の建設が進んでいる。
さらなる増設を求める声も米インド太平洋軍から出ていたが、4月11日の比日米首脳会談の後の会見でマルコス大統領は「EDCAを増設する計画はない」と断言。「2027年までに中国が台湾への軍事行動に踏み切る準備を整える」(アキリーノ米インド太平洋軍司令官)ことが予測される中、地域でのプレゼンス強化を急ぐ米国側と、中国を刺激し台湾有事に巻き込まれることを懸念する比との間で駆け引きが行われているとみられる。
▽GSOMIA年末までに
米国政府はこのほど、米時間22、23日に行った第11回比米戦略対話で、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を今年中に締結することで一致したと発表した。同協定を締結すると、比が米国側の機密保持規則に従うことを条件に、比が米国政府の軍事機密にアクセスすることが可能となる。
また、今回の戦略対話では、米国防総省による1億2800万ドル(約202億円)の投資を含む来年のEDCAプロジェクトの決定、EDCA施設への人道支援物資の事前集積、第4回の比米外務・防衛相会合(2プラス2)を開催することなどでも一致した。(竹下友章)