範囲・規模で過去最大に 比米総合軍事演習バリカタン開始
比米総合軍事演習バリカタン開始。仏海軍参加、EEZでの演習、PCG船舶の参加、中距離ミサイル配備訓練など過去最大規模に
首都圏ケソン市の国軍本部(キャンプアギナルド)で22日、フィリピンと米国の年次合同総合軍事演習「バリカタン」の開始が宣言された。39回目となる今年のバリカタンは、初のフランス海軍の参加、初の排他的経済水域(EEZ)での演習、初の比沿岸警備隊(PCG)船舶の演習参加、初の中距離ミサイル配備訓練、大統領府広報班や外務省など国軍以外の政府機関も加わる初のサイバー・情報戦演習などが盛り込まれ、過去最大の演習範囲となる。また、米軍約1万1000人、比国軍約5000人、豪州軍約150人、仏軍約100人のほか、国家警察特殊部隊、PCGも参加。対サイバー・情報戦演習には幅広く政府機関から職員が参加するため、参加人数規模も過去最大になる見通し。
開会式後の会見でPCGのバリロ報道官は、PCGから日本供与の97メートル級巡視船「BPRテレサマグバヌア」「BRPメルチョラアキノ」の2隻と、日本供与の44メートル級巡視船4隻が演習に投入されると明らかにした。一部は25日から5月4日にかけ、南沙諸島のあるパラワン州西部で実施される比米仏の海洋合同演習の中の捜索・救助訓練に参加するとともに、演習海域の警備を行う。また、米国の沿岸警備隊職員も米海軍艦に同乗して参加する。
同海上演習に比海軍は揚陸艦「BRPダバオデルスール」(120メートル)、哨戒艦「BRPラモンアルカラス」(115メートル)を投入。米仏の軍艦と航行の自由作戦、相互の艦載機着艦訓練なども実施する。
比国軍のマービン・リクディン少将は会見で、「演習海域には中国の建設物があるため、中国船との遭遇は想定している」と述べた。また、比米の特殊部隊が比最北のバタネス州で島しょ奪還訓練を実施することを明らかにした。
北イロコス州では、統合防空ミサイル防衛訓練を実施予定。近距離自走式対空ミサイル・システム「アベンジャー」の実弾訓練を行うほか、短距離対空ミサイル「ミストラル」、地対空防空システムなどが投入される。
さらに同州では6日に上陸阻止訓練を実施する。比米陸海空軍・海兵隊が戦車、榴弾砲、高速戦闘艇、軍用機を投入し実弾演習を実施。8日には退役艦の撃沈訓練を行う。
パラワン州では30日から4月1日にかけ、特殊部隊によるパラシュート降下訓練、揚陸艦・水陸両用強襲車を使用した沿岸強襲訓練、飛行場奪取訓練、高機動ロケット砲システム「ハイマース」や榴弾砲の実弾演習などが実施される。
東南アジア諸国連合(ASEAN)各国、英国、カナダ、韓国、インド、日本、ニュージーランド、ドイツがオブザーバー参加する予定。自衛隊は2025年のバリカタンの構想を練るワークショップに招待を受けている。(竹下友章)