危険操船と放水に「深刻な懸念」 南シナ海問題でG7外相
G7外相が共同声明で初めて「南シナ海における中国の海警局と海洋民兵の危険な使用」「比船に対する危険操船や放水砲発射の増加」と中国の威圧行動に具体的に言及
イタリアで開催された主要先進7カ国(G7)外相会合で現地時間19日、共同声明が発表された。同声明は、南シナ海問題について「南シナ海での中国による海警局と海洋民兵の危険な使用に反対する」と具体的な表現で反対を表明し、その上で「フィリピンの船舶に対する危険操船や放水砲発射の増加」に対し深刻な懸念を表した。また「各国が公海上に有する航行の自由への中国による妨害」に対しても反対を表明。中国による比船への妨害行為がエスカレートした昨年以降、G7外相会合・首脳会議の共同声明は「南シナ海における状況に懸念を表明する」との表現にとどめていたが、今回は初めて具体的な状況の描写に踏み込み、中国に対しより明確な態度を示した。
今月11日(米時間)に初開催された比日米首脳会議で出された声明では、「南シナ海における海上保安機関と海上民兵の危険で威圧的な使用」への反対、「セカンド・トーマス礁(比名アユギン礁)への補給妨害」への懸念が明記されており、日米に続き主要先進7カ国が比への支持を強く打ち出した。
今回のG7外相共同声明ではまた、「南シナ海における中国の拡張的な海洋権益の主張には法的根拠がない」として「同海における中国の軍事化と威圧的、脅迫的行動」への反対を表明。1982年採択の国連海洋法条約(UNCLOS)が「普遍的・統一的な性格を有していることを強調し、海洋の全ての活動の法的枠組みに果たしている機能を確認する」とした上で、UNCLOSに基づき中国の南シナ海における権益主張を全面的に退けた2016年7月12日の仲裁裁判所判を「当事国を法的に拘束し、紛争を平和的に解決するための有用な基礎になる」とする立場を改めて表明した。
▽重要な対話相手
その一方で中国に対し、「世界的な課題に対処するための重要な対話相手であり、共通の関心領域について協力する用意がある」とし「われわれの方針は中国を害したり、その経済発展を妨げることを意図していない」との融和的姿勢も改めて示した。その上で、「強制的技術移転、不当なデータ開示などの中国の非市場的政策・慣行は、われわれの労働力、産業、経済強靭(きょうじん)性に害する過剰生産能力をもたらしている」と指摘。「デカップリング(切り離し)は行わないが、多様化を通じてデリスキング(リスク低減)は行う」との姿勢を示した。
台湾問題については「台湾海峡の平和と安定は国際社会の安全保障と繁栄に必要不可欠であり、台湾海峡問題の平和的解決を求める」との従来の表現を踏襲。台湾が「独立国家であることを要件としない世界保健機構(WHO)のメンバーとして世界保健総会、WHO技術会議に参加することを含め、国際社会へ参加する」ことへの支持を表明した。台湾は7年連続で中国などの反対によりWHO総会に参加できていない。(竹下友章)