「3カ国合意結ぶ」 初の比日米首脳会合に出発
訪米前にマルコス大統領「3カ国首脳会議では、南シナ海問題を含む3カ国の経済・安保合意を結ぶ」
マルコス大統領は10日、米国で現地時間11日に開かれる初の比日米首脳会談に出席するため、ワシントンDCに出発した。出発前の演説で大統領は、南シナ海の平和と航行の自由に関する協力を含む、3カ国の経済・安全保障合意を取り結ぶ予定であることを明らかにした。また、比米2カ国の首脳会談も実施すると発表した。
演説で大統領は、「首脳会議では経済の強靭(きょうじん)性と安全保障の観点から経済協力の強化を強調する」とし、防衛と海洋協力のほか、重要インフラ、半導体、デジタル化、サイバーセキュリティー、重要鉱物、再生可能エネルギー分野での協力の推進が目的だと発表。今回の合意は経済分野が中心になると予告した。その一方で、「共通の関心事である地域の安全保障問題についても意見を交換する」とした。
中国による「経済的威圧」に対し、同志国間でサプライチェーン(供給網)を強化することによって対応する「デリスキング」の動きが比への戦略的投資を加速させているという現在の流れを、11月の米大統領選で政権が交代した場合でも維持させたい意図がありそうだ。
また大統領は、今回の3カ国首脳会談は、昨年6月に東京で開かれた初の比日米安全保障担当高官協議、同9月にインドネシアで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議・関連会合の際に実現した岸田首相、ハリス副大統領との懇談、同9月にニューヨークで開かれた比日米外相会談を通じて発案され実現したことを明らかにした。
▽「比の従属強める」
一方、左派系市民連合バヤンは10日に声明を発表し、比日米首脳会議を通じた3カ国安保連携の強化に対し、「比における外国軍の施設、軍事演習を増加させるとともに、わが国の領土を、米国が率いる軍事ネットワークの延長として利用されることにつながる」と反対した。また、マルコス大統領を「西フィリピン海(南シナ海)での比の主権主張を、米国の地政学的戦略を推進するための道具に使っている」と非難した。
さらに、3カ国安保協力の強化は、「比米協力強化協定(EDCA)の対象基地の追加や、日本との円滑化協定(RAA)の締結を通じ、米国中心の体制を強め、比をさらに従属的な立場に陥れる」と警戒を示し、「共同訓練・軍事演習の開催地はいつも比であり、米海軍主催の環太平洋合同演習(リムパック)がハワイで引き起こしたように、比に経済的負担、環境破壊、女性への暴力、先住民の権利への侵害を与える恐れがある」と訴えた。
また、比最大の小規模漁業組合連合パマラカヤは、声明で「対外防衛のために、かつての植民国である日米と手を組むのは屈辱的だ」と批判。「漁民の要求は、南シナ海における比の排他的経済水域(EZZ)の非軍事化であるのに、3カ国安保連携の強化は同海域への戦闘艦や兵士の派遣を増加させてしまう」と懸念を表明した。(竹下友章)