安保連携を加速へ 「戦争」への言及も
比米の国家安全保障担当閣僚が電話会談し、来週の比日米首脳会談の準備について議論。米側は南シナ海問題への「鉄壁の関与」を強調
フィリピン国家安全保障会議は2日、比米の国家安全保障政策を担当するアニョ大統領顧問とサリバン米大統領補佐官が1日に電話会話を行ったと発表した。両者は来週に予定される史上初の比日米3カ国首脳会談に関して協議。さらに、サリバン氏は比船の損壊、比職員の負傷事件まで発展している南シナ海問題について、比米相互防衛条約に基づく「鉄壁の関与」を改めて表明した。先月19日のブリンケン米国務長官の来比、27日の比米国防相電話会談に続き、米国側の外交・国防・安保閣僚が立て続けに比の防衛へ協力強化や関与を表明した。
マルコス大統領は先月28日の声明で、中国の南シナ海における実力行使に対し、「比国民は決して降伏しない」と宣言。同盟国・友好国からの支援を取り付けながら、「数週間内に『相応した』対抗策を講じる」と述べていた。さらに、海洋安全保障や領有権問題に関する諸問題に統括的に取り組む国家海洋委員会(NMC)を設置する大統領令57号に署名したことを31日に公表した。
こうした動きに対し、政府・議会からは中国との「戦争」のリスクへの言及も出はじめている。国家安全保障会議(NSC)のマラヤ事務局長補は1日、マルコス大統領が発表した対抗策について「同盟国・友好国・パートナー国と共にわが国の軍事力・防衛力を強化する内容が含まれる」と説明。その上で、「戦争」が発生するリスクに言及し、「戦争の勃発は、比と中国はもちろん、どの同盟国・パートナー国の国益にもならない」とし、「相応した対応策」には、可能な限りの外交の努力も含まれると強調した。
▽トロイの木馬を入れるな
大統領の姉であるアイミー・マルコス上院議員(外務委員長)は1日に「何より国民を最悪の戦争から守らなければならない」との声明を発表。「中国との海洋問題を巡っては、理性より感情が優先されており、これは、比人の誇り以上のものを失わせる危険な道につながっている」と警鐘を鳴らした。
さらに、大統領令57号の中に、国家海事センターに対して外国からの寄付、補助金、贈与を受領する権限を与える条項が含まれていたことを問題視。「外国からの干渉というトロイの木馬を迎え入れる内容になっている」とし、「このような外国からの支援は、ウクライナやガザで見たように、終わりのない紛争に燃料を注いできた。もう一つの紛争が発生するのを防ぐためにすべきことは、われわれの真の友好国だといってくれる国々からの平和的解決だ」と主張した。また、国連海洋法条約(UNCLOS)に批准していない米国を念頭に、「UNCLOSへの批准を拒み続けていながら、ルールに基づく国際秩序が声高に叫ばれている中では、(比への)支持の宣言さえも信頼性に欠ける」とし、その上で、中国および他の海洋権益主張国との対話の開始を呼びかけた。(竹下友章)