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1月29日のまにら新聞から

「大衆を利用する動き許さぬ」 改憲巡り両院対立が先鋭化

[ 1205字|2024.1.29|政治 (politics) ]

外資規制条項の事実上の廃止を目的にしている改憲の方法論を巡って上下両院で対立が先鋭化している

 憲法の外資規制条項の事実上の廃止を目的とする改憲指示がマルコス大統領から出たことで本格化している憲法改定論議を巡り、上下両院が対立を先鋭化させている。火種は、自治体ぐるみでの署名の買収行為の疑いも出ている国民の請願に基づく改憲発議の動きだ。国民請願の発議の道が開かれると、各選挙区の自治体を影響下に置く下院議員、そして大多数の下院議員を束ねる下院議長が改憲の主導権を握ることになると、上院が警戒しているためだ。

 アイミー・マルコス上院議員は28日、国民請願による改憲発議の動きについて、「上院は大衆を利用する動きを許さない」と宣言。署名の対価として自治体が補助金や社会福祉支援を署名者に提供しているとの報告が出ていることを念頭に、「(改憲を通じた)議員らの任期延長のための署名買収に公金を使わせるわけにはいかない」とし、さらに「改憲関連法案は立法行政開発諮問委員会の優先法にも入っていない」と指摘した。

 同議員は26日にも、「ロムアルデス下院議長の事務所は各選挙区に2000万ペソの資金を割り当てており、7月9日を期限とした国民発議の署名集めを主導している」「下院は両院決議案6号で議会による発議に同意したにもかかわらず、国民発議の動きをやめていない。これは深刻な信用問題だ」などとして、ロムアルデス氏を名指して非難していた。

 これに先立つ23日、上院の全24議員は声明を発表。国民発議について「三権分立から上院を締め出すことにより改憲を容易にする行為だ」と反対し、「外国人から土地を守ることもできなくなり、(正副大統領・国会議員の)任期の撤廃や、次の中間選挙・統一選挙の中止への道が開かれる」などと主張した。

 さらに26日、ズビリ上院議長は声明を出し、「われわれは『憲法の危機』を警戒し、それを避けようと努めているが、残念ながら少しずつ始まっているようだ」と警戒感をあらわにした。

 これら上院議員らの発言に対し、28日までに、下院の役員らから反論が噴出。ダリペ下院与党院内総務は声明で「ズビリ議長が下院と共同歩調を取る代わりに、憲法上の危機に飛躍したことは残念」と名指しで批判し、「われわれに必要なことは対話であり、『最後の日』の予言ではない」と述べた。

 また、スアレス下院副議長は「性急な『憲法上の危機』とのレッテル貼りにより、ズビリ議長は二極化と行き詰まりに陥るリスクを冒している」とした。

 一方、ロムアルデス下院議長自身は、「下院は改憲発議のための国民請願の署名集めに動いておらず、議会主導による改憲発議を目指す両院合同決議案に従う」と述べている。

 サントトマス大政治学部のデニス・コロナシオン教授は今後の見通しについて、「上下両院がそれぞれ非難の応酬をしているうちは、改憲は実現しない。改憲を進めるためには、大統領の介入が必要になるだろう」と述べている。(竹下友章)

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