RAA早期妥結で一致 比日外相会談
日本で比日両外相が会談。訪問部隊協力円滑化協定の早期妥結に向け取り組むことや、防衛装備・技術協力を着実に進めていくことで一致
日・東南アジア諸国連合(ASEAN)友好協力50周年首脳会議の関連行事出席のため訪日中のマナロ外相は16日午後、東京都内で上川陽子外相と会談した。東・南シナ海で中国が覇権主義的な動きを強めていることを念頭に、両外相は訪問部隊の法的地位を定める訪問部隊協力円滑化協定(RAA)交渉の早期妥結に向け取り組むことや、比日米3カ国協力の具体化および防衛装備・技術協力を着実に進めていくことで一致した。
上川外相は、11月の岸田文雄首相の比訪問の際に合意された、日本による政府安全保障協力強化支援(OSA)の初適用例となる沿岸監視レーダーの無償供与を着実に実施するとともに、政府開発援助(ODA)を通じた巡視船供与等を通じ、法の支配に基づく海洋安全保障・秩序の維持強化に向けた協力を「さらに強化したい」との意向を伝えた。
比政府は最近、日本からODAを通じ比沿岸警備隊(PCG)最大巡視船と同じ97メートル級巡視船を5隻調達すると発表している。
また上川外相は、18日に予定されている、岸田首相が提唱した「アジア・ゼロエミッション共同体」の第1回首脳会議などを契機に、エネルギー移行や脱炭素化の協力を強化するとともに、引き続きインフラ協力も着実に進めたいとの意向を伝えた。マナロ外相は、これまでの日本の協力に対し謝意を表し、「これらの分野で日本との協力をさらに進めたい」と応じた。
また両外相は、地域・国際社会の諸課題についても意見交換を行い、南シナ海、北朝鮮、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるフィリピン人の人質の問題を含めたイスラエル・ガザ情勢等の課題について引き続き連携していくことを確認した。
▽進む安保協力
日・ASEAN特別首脳会議に先立ち、日本とインドネシアの外相も会談を行い、総額90億5300万円を限度とする無償資金協力「海上保安能力向上計画」に関する書簡を交換。インドネシアに日本建造の大型巡視船1隻を無償供与することで合意した。またマレーシアとは、フィリピン、バングラデシュに続いて3例目となるOSAを実施することで合意。マレーシア国軍に対し、4億円を供与額として救難艇などを無償供与することが決まった。
日・ASEAN特別首脳会議は16日夜、東京・元赤坂の迎賓館の夕食会で開幕。会議には、マルコス大統領を含むミャンマー以外のASEAN9カ国首脳と、加盟が内定している東ティモールのグスマン首相が出席。17日に討議が行われ、それを踏まえて共同議長の岸田首相とインドネシアのジョコ大統領が成果文書として共同声明を出す見込みだ。
「現在のウクライナは明日のアジア」という危機感を背景に同志国と歩調を合わせ安全保障能力と連携の強化を推し進める岸田内閣が、東南アジア外交の基本理念となってきた1977年の「福田ドクトリン」の第1番目に挙げられる「日本は二度と軍事大国とならない」という原則を、現在の世界情勢に合わせてどういう形で引き継ぐのかもポイントとなりそうだ。(竹下友章)