「比防衛に鉄壁の関与」 比米国防相が電話会談 中国との船舶衝突で
南シナ海比中船舶衝突を受け、比米国防相が電話会談。米側は比防衛への「鉄壁の関与」を再表明
南シナ海南沙諸島のアユギン礁(英名セカンドトーマス礁)付近で中国海警局、比沿岸警備隊(PCG)を巻き込んで22日に発生した比中船舶の衝突事故を受け、テオドロ比国防相とオースティン米国防長官は27日、電話会談を行った。両者は今回の事案を「中国船による危険かつ不法な操船が比補給船、PCG船との衝突を引き起こし比船員を危険にさらした事件」(両国防省共同発表)として、意見を交換。オースティン氏は、米国による比とインド太平洋への「鉄壁の関与」を改めて表明した。
両者は比米相互防衛条約(MDT)が、「『南シナ海を含む』太平洋のどこの場所でも、『沿岸警備隊船を含む』両国の公船、航空機、軍隊に適用される」ことを改めて確認。両国間の調整、両軍の相互運用性向上、比国軍近代化などの取り組みを強化・加速化させるとともに、協力範囲を拡大することで一致した。
今年に入って中国はPCG船に対し、隊員に一時的失明を引き起こした軍用級レーザーの照射、小型船を転覆可能な大型放水砲の発射、今回の危険操船による衝突の誘発と、力の行使を強めている。比政府はいずれもMDT発動条件となる「武力攻撃」にはまだ当たらないとの見解を示しているが、今回の国防トップ会談では、「レッドライン」はどこにあるかについての認識のすり合わせも行われたとみられる。
さらに両者は、近くインドネシアで開催される東南アジア諸国連合(ASEAN)国防相会議(ADMM)プラスの場で、テオドロ氏就任後初となる対面での比米国防相会談を開くと申し合わせた。同会議は11月16日開催。日本、韓国、豪州、インド、ニュージーランドのほか、中国、ロシアも対話国として招かれている。
6月にはアジア安全保障会議(シャングリラ会合)のサイドラインとして初の比日米豪防衛相会談が開かれており、次のADMMプラスでは2度目の4カ国国防相会談など多国間国防会談がセッティングされ、「同志国」間の安全保障ネットワークがアピールされる可能性もありそうだ。
両者はまた、先月パワラン島沖で実施した比米海軍の合同航行などを含めた最近の両軍の協力の進展を歓迎した。先月実施された比米「合同航行」に、比海軍はミサイルフリゲート艦BRPホセリサール(107メートル)、米軍はミサイル駆逐艦USSラルフジョンソン(155メートル)を派遣していた。(竹下友章)