「海上防衛支援を期待」 日本政府の装備品移転で
参謀総長「レーダー以外に日本からOSAを通じ欲しいのは海軍艦、哨戒機、無人機、潜水艦」
ブラウナー国軍参謀総長は19日、外国人特派員協会主催の記者会見に応じた。今年から始まった日本の政府安全保障能力強化支援(OSA)に関し、「日本政府は近く防衛装備品移転三原則を緩和し殺傷性装備品の移転を可能にする見込みだが、緩和された場合どのような装備品が欲しいのか」とのまにら新聞の質問に対し、参謀総長は「現在、国軍の最大の懸念事項は海洋防衛だ」と強調。OSA第1弾として比に無償供与される見込みの警戒管制レーダーに加え、離島防衛や迎撃作戦に用いるために必要な装備品として、外洋に展開できる海軍艦、哨戒のための航空機、情報収集・警戒監視・偵察(ISR)のための無人航空機を挙げた。また、潜水艦についても「国軍近代化プログラムのホライゾン3の中の『欲しいものリスト』に入っている」とした。
海洋防衛装備品を重視する理由については「以前の防衛体制は海岸線からの国土防衛だったが、今は防衛線を前進させている」と説明。「例えば、(南シナ海南沙諸島の)パグアサ島は排他的経済水域(EEZ)の向こうにあるが、2016年の南シナ海仲裁裁判所判断で同島は12カイリの領海を有することが確認されている」とし「そのため国軍はそうした離島にも防衛義務を有し、沿岸基線から遠く離れた領域を守るための能力向上を行わないといけない」と述べた。
防衛装備品移転三原則策定後初の国産完成装備品の海外輸出例(2020年契約)となった警戒管制レーダー(移動式1基、固定式3基)の移転の進捗(しんちょく)状況については、一部が「機能し始めている」と説明。その上で「現存する他のレーダーもあるが、課題は全てのレーダー情報を統合し、比領海およびEEZの全体像をつかむことだ」とし「警戒管制レーダーは海洋状況把握(MDA)に力を発揮する」と海洋防衛に対する機能を解説した。
▽座礁艦にネット接続
また、6月に比日米の国家安全保障会議担当高官による会合で議論された南シナ海での合同哨戒については「国軍としては明日にでもできる体制だ」とした上で、「軍より上の様々なレベルでまだ調整を経る必要がある」とし、政府間調整が難航していることを示唆した。さらに「米国、豪州、カナダとは既に合同哨戒(合同航行)を実施している」と報告。英国、カナダ、フランス、ニュージーランド、日本などが合同航行の希望を表明しており、国軍としては二国間・多国間での実施を歓迎すると述べた。
南シナ海南沙諸島のアユギン礁の支配を固めるために座礁させてある比海軍艦BRPシエラマドレの現状については、「いまインターネットに接続されたので、配置要員は愛する人とコミュニケーションを取ることができ、もう寂しい思いはしていない」としながら「生活環境は見るも悲しい状況だ。寝具、食事スペースを設置したい」と報告。1999年に座礁して以降劣化が進んでいる艦体の補修については「ただ、表面をタパル・タパル(継ぎ当て)しているだけ」と笑った。
台湾で軍事衝突が発生した場合についての質問には、「台湾に対する軍事攻撃の兆候は観察されていないが、同志国とともに『いかなる事態』にも対応する準備はできている」とした。(竹下友章)