「海上水路維持に全力」 比仏首脳が電話会談
比仏大統領が電話会談。仏大統領は南シナ海問題に関し比の取り組みへの支持表明
大統領府は28日、マルコス大統領とフランスのマクロン大統領が27日に電話会談を行ったと発表した。会談でマルコス大統領は、仏が比の南シナ海問題への取り組みを支持していることに感謝を表明し、「(南シナ海で比の権益が及ぶ)西フィリピン海の海上水路と上空航路を常にオープンにするための最大限の努力をしている」と伝えた。
サンバレス州沖のパナタグ礁(英名スカボロー礁)に中国が設置したブイを比が切断、撤去した直後のタイミングでの首脳電話会談となり、フランスが南シナ海問題に積極的に関与する姿勢が表れているといえそうだ。
マルコス大統領は「フランスが国際法、特に国連海洋法条約(UNCLOS)の順守に関し、比を支持してくれたこと」に感謝を表明。UNCLOSは中国の南シナ海への海洋権益の主張を全面的に退けた2016年南シナ海仲裁裁判所判断の根拠となった国際条約だ。また、200カイリの排他的経済水域(EEZ)の範囲を定めた同条約に従うと、比沿岸基線から124カイリにあるパナタグ礁の周辺海域は比の管轄権下にあることになる。
マルコス大統領はまた、フランスが南シナ海に「艦船を派遣し哨戒を実施したこと」にも謝意を表した。ブコ駐比仏国大使は7月、今年に入って3隻の仏海軍フリゲート艦が比に寄港したことを明らかにしている。
さらにマルコス大統領はマクロン大統領に対し、国賓としてのフィリピン訪問に招待。また、両大統領はフランスの閣僚訪問団が年内に訪比することも申し合わせた。
太平洋に海外領土を有するフランスは欧州各国に先立ち2018年にインド太平洋戦略を策定、21年の欧州連合(EU)版インド太平洋戦略の策定へも主導的役割を果たしている。
▽自己満足に過ぎない
中国外交部(外務省)の汪文斌報道官は27日、ブイ撤去について「黄岩島(パナタグ礁の中国名)はずっと中国の領土だ。比が行ったことは自己満足以外の何ものでもない。中国は黄岩島の領土主権とそれに属する海洋権益を守り続ける」と宣言した。
300メートルのブイは、同礁の東南の礁湖の入り口に当たる部分に船舶の進入を妨げるように設置されていた。それに対し比沿岸警備隊(PCG)は25日までに、ブイを海底に固定するロープを切断し撤去。その翌日、中国外交部は「問題をかきたてる行為は行うべきでない」と警告していた。(竹下友章)