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9月8日のまにら新聞から

「現状変更への対応を強化」 ASEAN会議比日米3者会談

[ 1198字|2023.9.8|政治 (politics) ]

マルコス大統領、岸田首相、ハリス米副大統領が3者会談。南シナ海問題で連携強化

ハリス副大統領と懇談するマルコス大統領=大統領府が7日に公開

 インドネシアで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議とその関連会議に出席したマルコス大統領、岸田文雄首相、ハリス米副大統領は6日夜、公式夕食会で3者会合を行った。日本外務省によると、3者は中国が海洋進出を強める南シナ海情勢について意見交換を行い、「力による一方的な現状変更の試みに対し、連携して対応していくこと」で一致。その上で「今後も様々な形で日米比の一層の連携強化を進めること」を確認した。ロムアルデス駐米比国大使は日米両国から比側に会談の要請があったとしている。

 今年は初の比日米3カ国の海上保安機関共同訓練や、比日米豪海軍種共同訓練が実施されたほか、6月に東京で開かれた比日米安全保障担当高官会合では、南シナ海における3カ国の海軍種合同哨戒の年内実施に向けた協議が行われており、多国間安保協力が急速に進展している。

 米国はインド太平洋地域の安全保障環境を、現状の米国を中心とする複数の2国間同盟から、「多国間安保協力の形態の確立」を通じた多国間安保ネットワークへの進化を目指す。これはアジア版北大西洋条約機構(NATO)を警戒する中国を刺激しかねない動きだが、今回3国代表は改めて多国間安保協力を推進する方向で足並みをそろえる姿勢を見せた格好だ。

 ▽同盟以上の存在

 同日開かれた米ASEAN首脳会議でハリス副大統領は「米国の『自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)』は、ASEANの中心性を支持し、ASEANと国際ルールや規範を共有している」と述べ、米国の戦略とASEANのインド太平洋アウトルック(AOIP)との親和性を指摘。その上で「米国による防衛と抑止の取り組みとプレゼンスは、われわれの祖国を守り、地域の安定性を保つために役立つ」と述べた。

 同会議でマルコス大統領は、「米国は比にとって、近しく、そして頼れる長きにわたる友人・同盟国以上の存在だ」と最大級の表現で米国との関係を形容。AOIPについて「よりつながり、繁栄し、安全で、強靭(きょうじん)な『自由で開かれたインド太平洋』を構想するものだ」とし、米国版FOIPとの共通性を強調した。

 さらに8月に初めて実施された日米韓首脳会合に触れ、「その共同声明では、南シナ海での海洋地勢の軍事化に反対し、われわれの漁民が悪影響を受けている違法・無報告・無規制(IUU)漁業が続いていることにも懸念を表明してくれている」と称賛。米国が推進する多国間安保協力の進展を歓迎する意を示した。

 一方、同日開かれた中国ASEAN首脳会議の途中で、マルコス大統領は中国の李強首相とも立ち話をした。大統領は比中協力を引き続き推進する意向を表明するとともに南シナ海行動規範(COC)交渉の進展を歓迎した上で、南シナ海問題についても言及。「比は国際法に従って権利を主張していく」と直接伝えた。(竹下友章)

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