「覇権主義的野心を拒否」 首脳会議で強いメッセージ
ASEAN首脳会議で大統領は「覇権主義的な力の行使」に反対する強いメッセージ送る
大統領府は6日、インドネシアで開催されている第43回東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で、マルコス大統領が行った安全保障問題に関する提言を公開した。
大統領は「地域の安全保障環境はかつてない変化を見せており、南シナ海を『平和、安定、繁栄の海』とするわれわれのビジョンは、現実からほど遠くなっている」と指摘。放水砲を発射して比沿岸警備隊の補給任務を妨害するなど海洋進出を強める中国を念頭に、「平和的な国際秩序が覇権主義的な野心達成のための力に支配されることを許してはならない」と訴えた。
大統領は南シナ海の紛争について、「比はルールに基づく国際秩序を育むため『全ての国家』と協力する」と比の立場を表明。その上で「国連海洋法条約(UNCLOS)に沿って南シナ海における航行と上空飛行の自由を尊重するとともに、行使し続ける」と宣言した。
さらに「比は紛争を求めているわけではない」と断りながら、「南シナ海における主権、(海洋資源に関する)主権的権利、(構築物の建造や調査に関する)海洋管轄権に対する問題に『対処』することは指導者としての義務だ」と明言した。
また、米中対立を念頭に「大国間の緊張と不信がエスカレートするにつれ、この地域を十分に脅かす『誤算』が発生する可能性も高まる。それは『最も深刻な結果』を伴う」と懸念を表明。
大統領は「比は南シナ海における紛争を2大国間の競争というレンズのみを通じて理解するような言説は誤解を招くものとして固く拒否する」と述べ、南シナ海を米中覇権競争の場とする考え方を否定。その上で「ASEANの地域構造を相互理解、戦略的信頼、紛争の平和的解決を約束する外交的架け橋として活用することが不可欠だ」とし、地域の緊張・紛争を解決する場としてのASEANの役割を強調した。
紛争を解決するための手段としては、南シナ海行動規範(COC)作成の加速化を強調するとともに、ASEAN加盟国軍による南シナ海紛争の平和的管理の方法を定めた任意の枠組みである「ASEAN国防相会議(ADMM)ガイドライン」を「実用的でASEANパートナー国への拡大も期待されている枠組み」として挙げ、実施への協力を求めた。(竹下友章)