「マハルリカファンドに期待」 公明山口代表が大統領と会談
公明党山口代表がマルコス大統領を表敬訪問。政府系ファンドに期待を表明
東南アジアを歴訪中の公明党・山口那津男代表は16日、マルコス大統領、ズビリ上院議長と相次いで会談した。山口氏は7月に設置法が制定された比政府系ファンド「マハルリカ・インベストメント・ファンド」を評価し、同ファンドが透明性、開放性、独立性を確保しながらインフラ投資を促進することに期待を表明した。
また、比が上位中所得国入りを目指す中で、「現政権が力を入れる農業分野の協力を活発化することが重要だ」とし「比日関係がもう1段階高い関係に高まるように支援する」と請け負った。その上で、12月に東京で開催される日本・東南アジア諸国連合(ASEAN)特別サミットへの大統領の出席に期待を表明した。
マルコス大統領は地域の安全保障に関連して北朝鮮情勢に触れ、「アジアの平和と安定を脅かしかねない行動だ」とし「大きな懸念」を表明。北朝鮮情勢が悪化した際に「日本は矢面に立たされる」とし、日本と連帯する意思を示した。その上で、南シナ海における自由な貿易・海運を確保するため、合同哨戒や共同海上演習など日米比3カ国間の安全保障の取り組みを重視すると伝えた。
山口代表は「東シナ海、南シナ海での一方的な力による現状変更の試みについては、日本と比が協力して法の支配に基づく国際秩序を確保するため取り組みを進化させることが重要だ」と指摘。その上で、政策大学院大と海上保安庁、国際協力機構(JICA)が共同してASEANの海上保安機関の若手幹部を受け入れる修士レベルの「海上保安政策プログラム」について、「公明党は立ち上げから積極的に関わっている」と紹介。法に基づいた海洋秩序を維持するための海上保安分野における人材育成の重要性を説明した。
またズビリ上院議長との会談では、同議長から海上保安、安全保障、インフラ投資、日本で働く比人就労者に関する日本の取り組みに感謝が表明された。
山口代表は、日本政府内でインフラと観光開発を所掌する国土交通大臣は代々公明党から輩出されていることを紹介し、「斉藤鉄夫現国交相にも比からの期待を伝える」と応じた。
▽巡視船登載武器移転を議論
比日安全保障協力を巡ってフィリピンは、今年から始まった日本の政府安全保障能力強化支援(OSA)を通じた最初の装備品供与対象になることが見込まれている。海洋状況把握(MDA)の能力を高める警戒管制レーダーの供与が有力視されているが、比国軍のブラウナー参謀総長は中国の海洋進出を背景に海軍艦の供与を日本側に要望したことを明らかにしている。
OSAを通じ供与可能な装備品を規定するのは防衛装備品移転三原則だ。岸田首相の指示で与党・政府内で同原則の見直しの議論が進む中、公明党は与党内で殺傷性の装備品の移転に慎重な立場を示してきた。
「日本の護衛艦に当たる艦種を供与できるところまで、OSAの基準となる防衛装備品移転三原則を緩和することは許容できるか」とのまにら新聞の質問に、同代表は「殺傷性装備品の移転は禁止というのが原則。これは世論調査で過半数の国民から支持されている。現在五つの分野について装備品の海外移転の道を開いているが、戦闘行為が可能な護衛艦などはそれに該当せず移転はできない」と説明。
その上で「海上保安庁の巡視船は武器を搭載しているものの、それは殺傷でなく威嚇が目的であり、その使用は『警察比例の原則』という厳しい条件が付されている。巡視船は武器とセットで機能するもの。この部分は積極的に考えていいという議論もある」とし、巡視船に搭載する機関銃や機関砲については移転を解禁する可能性を示唆した。
現在認められている装備品の移転は、共同開発を除き、「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型どれかに該当するものに限られる。ただ、2018年の防衛大綱で定められた、「警戒監視」に特化した海自新艦種「哨戒艦」の設計・建造が現在進行中だ。今年度中をめどとする防衛装備品移転三原則の見直しにより、「警戒」「監視」の類型に該当すると考えられる哨戒艦の移転が可能となるかどうかは、今後の日本による対比防衛協力にとって重要なポイントになりそうだ。(竹下友章)