自由主義的立場鮮明に 2度目の施政方針演説
マルコス大統領がケソン市の下院本会議場で2度目となる施政方針演説に臨んだ
マルコス大統領は24日、首都圏ケソン市の下院本会議場で2度目となる施政方針演説(SONA)に臨んだ。昨年に引き続き、内容の多くが経済問題で占められたほか、2国間・多国間の貿易協定を拡大する方針を明言。より経済自由主義色の強い内容となった。
大統領は演説冒頭でまずインフレ問題に触れ、「インフレは昨年の最大の問題だったが、重要品目価格安定化の政府の取り組みもあり、今年1月の8・7%から5カ月連続で低下、6月は5・4%まで下がった」とインフレ沈静化の成果を強調。また成長率について「2022年は過去46年で最高の7・6%を記録し、今年第1四半期の成長率は東南アジアで最高水準の6・4%だった」と報告。経済の基礎的指標が堅調に推移していることを説明した。
物価高の悪影響を緩和するための政府の取り組みとして、公設の移動式市場「カディワ・ストア」にも触れ、「(現政権下で)全国で7000カ所以上設置されており、売上規模は7億ペソ。180万世帯が低価格食料品の恩恵を受けた」とした。
現在の高度経済成長を維持・強化するに当たり、海外との経済関係を重視する姿勢を提示。貿易については、東南アジア諸国(ASEAN)や日本、欧州と結んでいる貿易協定やパートナーシップ協定をさらに世界的に拡大し、比の競争力上の優位性を活用して経済的利益を獲得する」と述べ、自由貿易的な立場を明確にした。比の強みとして、観光、BPO産業などのサービス産業を挙げ、サービス輸出を一層強化するとの方針を示した。
外国投資の誘致に関しては、投資委員会(BOI)承認事業が最初の1年で1兆2000億ペソに達し、今月設置された投資優先窓口(グリーンレーン)を通じて承認された戦略的投資が、既に2300億ペソに達したと報告。また、大統領の就任後に行った外遊の成果として、計3兆9000億ペソの投資約束を持ち帰り、その投資により17万5000人の雇用が創出される可能性があるとした。
現政権の大規模インフラ投資政策「ビルド・ベター・モア」(BBM)については、前政権以上の対国内総生産比5~6%の予算を投じ続ける意思を改めて表明。「8兆3000億ペソの予算を投じたインフラ整備事業は、いま精力的に実施されている」とし、現在政府が新規123事業を含む194件の優先事業に取り組んでいることを報告。その中でも、総延長1200キロのルソン島高速道路網事業は同島北部のイロコス地方から南部ビコール地方までの移動時間を20時間から9時間に短縮、南北通勤線事業はパンパンガ州・ラグナ州間の移動手段を4時間から2時間に短縮すると説明した。
大統領はまた、バタアン~カビテ間連絡橋、パナイ~ギマラス~ネグロス島間連絡橋、サマル島~ダバオ市間連絡橋も政権の優先事業として強調した。
そうした優先インフラ建設事業への資金調達手段として、大統領は今月設置法制定により設立が決まった政府系ファンド「マハルリカ」の資金を、優先インフラ事業の中でも便益が大きく収益性の高い事業に活用できると説明した。
電力インフラについては、「この1年で8カ所発電所を新設し、発電量を1174メガワット増加させた」と報告。それにより約50万世帯に新たに電力を供給できたとし、2028年までに「全国の電力供給率100%を達成する」と宣言した。
新人民軍やイスラム過激派など反政府武装勢力への対応については、「紛争の根本原因に対処するための生計向上事業、コミュニティー開発事業は有効に機能してきた」と述べ、貧困という原因を重視するアプローチの有効性を指摘。武装勢力の社会復帰を促すため、政府に投降した構成員に対して「恩赦を与える予定だ」と明言し、議会に支持を求めた。SONAに先立ち、バンサモロ・イスラム自治地域(BARMM)のイブラヒム・モラド首相はミンダナオイスラム解放戦線(MILF)元メンバーの恩赦を与えるよう求めていた。(竹下友章)