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7月12日のまにら新聞から

南シナ海「戦争の海」に 米国など念頭にけん制

[ 1054字|2023.7.12|政治 (politics) ]

中国外務省高官が「第三国の介入で南シナ海が『戦争の海』と化す恐れがある」とけん制

 南シナ海南沙諸島の比の排他的経済水域(EEZ)内で中国海警局が比沿岸警備隊(PCG)へ妨害行為を行ったことで米国など各国から非難の声が上がるなか、中国外交部(外務省)の周莉参事官が9日、「われわれは平和的交渉によって南シナ海を平和の海にすることを目指しているが、(同海の沿岸国ではない)第三国によって『戦争の海』となる危険がある」との声明を出した。

 中国海警局船および海上民兵船とみられる船舶10数隻が6月30日、比のEEZ内にあるアユギン礁(英名セカンドトーマス礁)で、補給業務に向かうPCG船に立ちふさがり、威嚇的な操船をするなどして業務を妨害した。この事件に対し、オースティン米国防長官が「威圧的で危険な行動」として懸念を表明したのをはじめ、在比フランス大使館、駐比日本国大使、駐比ドイツ大使らが相次いで中国の行動に反対する声明を出していた。これらの動きに対抗し、中国外務省高官が武力衝突の可能性への言及にまで踏み込みけん制した格好だ。

 周参事官は「中国は国連海洋法条約(UNCLOS)が採択された1982年から南シナ海沿岸国と2カ国間チャンネルを設け対話を通じ南シナ海問題に対応してきた」と指摘。具体例として、「比とは1996年以来漁業問題と信頼形成に関する協議を継続しており、アロヨ政権期には比中越3カ国で合同海底探査を実施した」とし「中国は南シナ海に関する主張の対立と相違を棚上げにして共同開発を行うことを提案した最初の国だ」と訴えた。

 またベトナムとは「トンキン湾の海洋境界と業業活動に関する合意を2000年に締結し、2011年には海洋問題解決の対処原則に署名している」と説明した。

 その上で同参事官は「共同開発事業は2012年にノイノイ・アキノ元大統領が常設仲裁裁判所への提訴に動き出したため中断してしまった。この経験から教訓を学ばねばならない」と主張。「比中間には、紛争解決の唯一の手段は外交交渉だという合意があり、われわれは問題に対処する能力がある」としながら「第三国によって南シナ海が戦争の海になる危険がある」とし「強い警戒」を表明した。

 3月に黄渓連駐比中国大使は比米防衛協力強化協定(EDCA)に基づく米軍利用施設の増設が決まったことなどを受け、「米国が求めているのは軍艦で南シナ海を暴れまわる自由だ」と非難。比政府に対し「『比中間にくさびを打ち込もうとしている勢力』に流されるべきでもなく、まして『ガキ大将』を地域に招くことはない」と述べている。(竹下友章)

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