1年目の成績「未達成」 優先法成立わずか3本
大統領就任1周年。優先法案通過数は3本だけで大学教授は「未達成」
マルコス大統領は30日、就任1年の節目を迎えた。フィリピン大社会科学・哲学部政治科学科のアリエス・アルガイ学科長は28日、ラジオ番組でマルコス政権1年目の成績について、政府42優先法案のうち3本しか成立できていないことを挙げ、大学でいうところの期末提出物の未提出などで単位認定を保留する「未達成」との評価を下した。それに対し大統領は29日、記者団に対し「アルガイ教授に完全に同意する。まだやらねばならないことが山積みで、特に農業に関しては40年近く放置されてきた問題に取り組まねばならない」と述べ、一時的なものとしていた農務相の兼任を継続することを強く示唆した。
大統領は昨年7・5%を記録した経済成長に触れ、「高成長率を達成したものの、行政改革には変化の兆しが見え始めたばかりだ」とし、行政・経済の構造改革推進への意欲を示した。現政権は中央官庁の再編を行い無駄をなくす「適正規模化」、行政手続きを自動化し、人の介在を少なくすることで不正を減らす電子政府化などの行革のほか、デジタルトランスフォーメーション(DX)、再生可能エネルギーへの転換、内需志向の製造業育成、最新技術導入を通じた農業生産向上による食料安定供給などの経済構造の転換を目指している。
▽優先法案3本のみ
30日の英字紙スター電子版によると、大統領就任後1年で成立した法律は6本。政府優先法案である立法行政開発諮問委員会が提案した42法案の中で成立したのはSIMカード登録法、バランガイ(最小行政区)選挙延期法、国軍職員任期改正法の3本だけだ。
過去最大の得票数で当選し、大多数を占める与党連合のバックアップがあるはずの大統領が、なぜ法案成立に苦戦するのかについて、アルガイ教授は「議会が政権にそこまで協力的ではない」と分析する。
同教授は「マルコス大統領の政治的資本(政治的影響力)は、議会が政府優先法案成立に取り組むに値するほどのものとは認識されていない」と指摘。「就任1年目の制定法本数がわずか6本ということは、国家の重要課題とその解決法に関し、議会と大統領との間で考えが異なることを表す」とした。
また賛否が分かれる政府系ファンド「マハルリカ・インベストメント・ファンド」創設法案について、同教授は「選挙中には一切触れていない唐突な法案。選挙期間中に言及していたらそれだけでレッドカードになっていただろう」と解説。「いくら議会で通過しても、(父が行った)『王朝政治』の歴史を考えれば、一定数の国民に不信感を与えるのは確実だ」とした。
また同教授は、経済分野の優先法案が通過していないことを問題視。「1年目はハネムーン期間なので国民は問題を政府のせいにしないが、数年続くと政治責任を問う声が高まるだろう」と予想した。(竹下友章)