在フィリピン・カナダ大使館のハートマン大使は9日、フィリピンとカナダの間の訪問軍地位協定(VFA)の交渉が「最終ステージにある」と発表した。同大使は声明で「この協定が締結されれば、より深い協力と、より実質的な能力構築訓練への参加が可能となる」とし、カナダ軍の比米合同演習への正式参加の可能性に言及。締結時期については、「2025年末までに両国が署名・批准することが期待されている」とした。9日の英字紙インクワイアラー電子版などが報じた。
比加両政府は昨年1月、軍事上の教育・訓練・情報共有などに関する防衛協力覚書に調印。その際、テオドロ国防相は比カナダVFAの締結を目指すことを宣言していた。
カナダ政府は2022年に発表したインド太平洋戦略で、中国を「破壊的なグローバルパワー」と定義づけた上で、日・韓・インドや東南アジア諸国との戦略的協力を推し進める方針を打ち出した。23年6月には比日米加、同8月には比米豪加の海軍種による南シナ海上での多国間海上共同活動(MMCA)に参加。同海で圧力を強める中国への事実上のけん制に加わった。
また、23年にカナダは比政府に同国の船舶検知システムへのアクセスを提供することに合意しており、それにより比沿岸警備隊(PCG)は現在、自動船舶識別装置(AIS)をオフにしている中国海警局船などの中国艦船を探知し、監視することが可能。
▽多国間軍事協力の急拡大
比は既に米国、豪州との間で訪問軍の法的地位を規定するVFAを締結しているが、昨年には同種の協定である日本との部隊間協力円滑化協定(RAA)にも政府間で署名。昨年末には比上院で承認されており、日本の国会承認次第で締結される最終段階に入っている。
また、フランスとのVFAも23年末に検討を開始し、さらに24年4月にはニュージーランドとVFA早期妥結で合意。26年の締結をめどに今年1月に正式交渉に入った。(竹下友章)