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6月8日のまにら新聞から

大量破壊兵器密輸を想定 初の3カ国海上法執行演習

[ 1450字|2023.6.8|政治 (politics) ]

大量破壊兵器の密輸を阻止というシナリオで比日米海上保安機関が合同演習

バタアン州沖27.8キロの海上で合同訓練中の、右からPCG巡視船BRPメルチョラアキノ、海保の巡視船あきつしま、PCG小型複合艇。上空を飛んでいるのはPCG中型双発多目的ヘリEC145=6日、竹下友章撮影

比沿岸警備隊(PCG)、海上保安庁、米沿岸警備隊(USCG)による初の3カ国合同訓練「カアガパイ2023」が7日、終了した。前日には、合同訓練の目玉である法執行・捜索救難演習をバタアン州マリベレス町沖15カイリ、比接続水域内の南シナ海海上で実施。大量破壊兵器を密輸しようとした国際テロ組織メンバーの身柄を3カ国共同で確保するシナリオのもと行われた。

 この日の演習には3海保機関から約500人が参加。PCGは巡視船BRPメルチョラアキノ=97メートル、海保は巡視船あきつしま=150メートル、USCGはUSCGCストラットン=127メートル=とそれぞれ最大巡視船を投入した。

 メディアに公開された6日の海上法執行演習は、大量破壊兵器を積載した輸送船(仮名・MVデストロイヤー)が国際テログループのメンバー4人を乗せ大量破壊兵器供給国から比に向かっているとの連絡を比政府が国連安全保障理事会から受けたというシナリオ。

 演習は午前10時ごろから開始。PCGのBRPガブリエラシラン=83メートル=など比巡視船は、発見された兵器輸送船役のBRPメルチョラアキノの進路をふさぎ、無線で船舶情報の開示を求める。無線警告の段階では輸送の船主役は協力的で、任意協力の下でPCG巡視船が小型複合艇(RHIB)を出し、捜査チームが臨検をするため輸送船に乗り込んだ。すると、輸送船に乗っていた4人の国際テログループメンバー役が突如発砲。空砲の銃声は離れた記者船にも響いた。

 銃撃戦後、甲板上で捜査チームはテロリスト4人を無力化、制圧する。ところが、銃撃戦のさなかに見つかっていなかった他のメンバー5人が逃亡を図り海に飛び込んだとして、輸送船船主役が救難信号を発信。PCG船はその救難信号を繰り返した。

 それを受け、近くで「航海の自由作戦」を共同実施していたという設定の巡視船「あきつしま」およびUSCGCストラットンが、PCGと連携を取りながら捜索・救助活動に参加。飛び交う無線の中には日本語も聞こえた。海保は大型輸送ヘリ「EC225」、PCGは中型双発多目的ヘリ「EC145」を投入。3海保機関がそれぞれ小型艇を出し捜索訓練を実施した。海保が3人、USCGが2人のメンバーを救助したという設定でPCG船に搬送し、PCG医療班による応急措置訓練が行われたところで演習が完了した。

 終了後、メディア関係者約100人を乗せたCRPカブラ=44メートル、日本供与=で会見に応じたPCGのジェリック・イバネス報道官補は「この数日の準備によって今回の演習は完璧に遂行できた」と手応えを語り、その上で、合同訓練の目的を「海上保安に関する3カ国の相互運用性の向上だ」と説明。合同訓練の継続とさらなる能力向上に期待を示した。

 PCG本部のあるマニラ南港で会見を開いたバリロ報道官は、アブPCG長官の代理として、合同演習を成功させた3海保機関隊員に敬意を表明するとともに、東ミンドロ島沖の油流出事故での日米の支援への謝意を述べた。またPCGの近代化については「新しい巡視船、航空機、埠頭、ドック、レーダー基地が必要であり、調達を計画中だ」とした。

 1週間の合同訓練期間中、USCGは巡視船ストラットン内部のプレスツアーを実施した一方、海保巡視船あきつしまへの取材機会は提供されなかった。それに対し比大手テレビ局の記者からは「なぜ海保だけ巡視船への取材機会を提供しないのか」との不満の声も聞かれた。(竹下友章)

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