戦略的協力関係推進を希望 PCGにドローン供与を発表
比豪外相会談で豪州のウォン外相が比との戦略的パートナーシップ締結を強く希望
マナロ外相は18日、訪比中のウォン豪州外相と外相会談を行った。ウォン氏は「豪州は比の戦略的パートナーになることを強く希望している」と強調。会談で2国間関係を戦略的パートナーシップに高めるための関係強化に向け協議を行った。また同氏は比の海上保安能力と海洋状況把握(MDA)の向上のための支援として、豪州が比沿岸警備隊(PCG)にドローン(無人航空機)やその他の機器、訓練を提供することを発表した。
5月の比米首脳共同声明で明言された安全保障に関する比米豪3カ国協力について、両相は「検討中だ」とし「日本や米国のような『同志国』の連携の形態について議論を進めていく」と述べた。2月に豪州のマールズ副首相兼国防相が来比した際、両政府は南シナ海での比豪合同哨戒を検討することを申し合わせている。豪州は比にとって、米国を除いて訪問軍協定(VFA)を締結した唯一の相手で、「準同盟」関係。台湾海峡での緊張の高まりを背景に、いっそう比豪安全保障協力を発展させる方向性が確認された。
故安倍元首相の主導で作られた日米豪印戦略対話(クアッド)について両外相は「東南アジア諸国連合(ASEAN)と歩調を合わせ地域の平和と安定、ルールに基づいた地域秩序作りに関与していること」を歓迎。米英豪軍事同盟オーカスについては「特にインド太平洋地域の平和と安定の促進に関して透明な議論を行うことに期待する」とした。3月にはオーカスの枠組みを通じ米英原潜が豪州に寄港し、30年代に豪州が米国から最新原潜を購入する計画が発表され、中国からの反発を買ったが、比は「情報共有を評価する」と前向きな評価をしていた。
両相は南シナ海で海洋進出を強める中国を念頭に「すべての国が国際法、特に国連海洋法条約を順守する必要性がある」と強調。マナロ氏は豪州が中国の主張を全面的に退けた2016年の南シナ海仲裁裁判所判断を強く支持していることに感謝を表した。
共同記者声明では、比の包括的な経済成長、ミンダナオ和平、教育などの優先課題の支援のために豪州が実施する2023~24年の対比政府開発援助(ODA)を増額し、8990万豪ドル(約33億ペソ)にすることが発表された。
レアメタル(希少金属)やレアアース(希土類)など戦略的重要鉱物の開発に関する協力の可能性を探るとともに、交渉中の比に対するワーキングホリデー査証取り決めを通じて人的交流をさらに強化することで一致。今年10~12月期に豪州での開催が予定される第6回外務・貿易閣僚間会合への期待を寄せた。
またウォン氏は、先月、北イロコス沖で発見された戦時中に撃沈された日本海軍徴用輸送船「もんてびでお丸」の捜索への比の協力に謝意を表明した。同船は1942年7月1日に豪州人捕虜862人を含む捕虜約千人の輸送中に米国の潜水艦によって撃沈され「豪州の歴史上、海上で最大の人命損失」を出したとして知られている。(竹下友章)