「持続的訓練と運用が効果的」 バリカタン終了式で比参謀総長
初めてづくしの比米合同演習バリカタンが終了。多国間安全保障共同への方向性を提示
首都圏ケソン市国軍本部で28日、2週間以上にわたって実施された年次比米総合軍事演習バリカタンが終了した。終了式には、ガルベス国防相代行、センティーノ比国軍参謀総長、ジョン・アキリーノ米国インド太平洋軍司令官(海軍大将)、カールソン駐比米国大使、HKユー駐比豪州大使らが出席。比米両軍および自衛隊、韓国軍、仏軍、インド軍などから約200人が参加した。
史上最大規模となる約1万7767人が参加した今年のバリカタンは、初の豪州軍正式参加のほか、対戦車ミサイル「ジャベリン」や地対空迎撃ミサイル「パトリオット」の実弾演習、軍艦撃沈演習など初めてづくしだった。また、台湾に近い比最北のバタネス諸島でも高機動ロケット砲システム「ハイマース」の配備を想定した訓練が実施された。
比国軍のセンティーノ参謀総長は「初の実弾演習、初のサイバー演習、初の複数地同時演習など初めてづくしだったが、成功させられた。同盟・友好諸国との持続的な訓練と相互運用性の拡大が、最も効果的な方法だ」と総括。その上で「日本、韓国、インド、フランス、英国、カナダなどオブザーバーとのプログラムでも、相互運用性や統合作戦に関する見識を深めるとともに、『今後の共同の取り組み』に役立つ意見を交換できた」とした。
米国インド太平洋軍のアキリーノ司令官は「自由で開かれたインド太平洋の理念を共有する10カ国以上が参加したことで、比米2カ国関係の多国間安全保障ネットワークへの統合が明確になった」と強調した。
ガルベス国防相代行は、中国に実効支配を奪われている南シナ海スカボロー礁の対岸で26日に実施された軍艦撃沈実弾演習を念頭に、「慎重に選ばれた場所で初の実弾演習が行われ、マルコス大統領と共に観戦することができた。大統領がバリカタンを観戦したのは(ノイノイ)アキノ大統領時代の2012年以来だ」と述べた。
さらに同氏は、中国が警戒感をあらわにする比米防衛協力強化協定(EDCA)について、「EDCAは国軍の能力向上を通じ比の領土、(排他的経済水域における)主権的権利、主権を防衛することを可能にする。それだけでなく、国軍が地域の平和と安定に貢献することも可能にする」と主張。また、今回比米豪以外にオブザーバー参加した国はベトナム、シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイ、ブルネイ、日本、韓国、インド、フランス、英国、カナダの12ケ国だったことを明らかにした。
▽脅威は増加傾向に
カールソン大使は具体的な国名を伏せつつも中国の海洋進出を念頭に、「この数年、『南シナ海における挑発』を含む地域の脅威は増加している」と指摘。「こうした21世紀の課題に対応すべく比米同盟は進化し続けている」と述べた。
米海兵隊広報担当のマンウィラー中佐によると、自衛隊の制服組トップ吉田圭秀統合幕僚長は27日に米軍の司令官や比海兵のガーラン司令官らとの会談に電話で参加したという。吉田氏は終了式に招待を受けていたが今回は出席を見合わせた。
一方、中国外交部(外務省)の毛寧副報道局長は、大統領観戦のもと軍艦撃沈訓練が実施された26日、「今年のバリカタンが明らかに中国への対抗を目的としていること」への見解を求められ、「国家間の防衛・安全保障協力は地域の平和と安定につながる必要がある」と指摘。「(安保協力が)緊張を激化し信頼を毀損すること、ましてや第三国を標的にすることはあってはならない」とコメントした。(竹下友章)