「同志国」連携色濃く打ち出す 南シナ海合同哨戒「多国間で」
比米2プラス2では、比米2国間関係を日本や豪州を含む多国間連携に発展させる方向性が打ち出された
初めて豪国防軍が正式参加し、史上最大規模で始まった比米合同演習バリカタンに合わせ7年ぶりに開催された第3回比米外務・防衛閣僚会合(比米2プラス2)。比時間12日にワシントンDCで開かれた共同会見では、オースティン米国防長官が今年後半に「同志国」とともに南シナ海で合同活動を実施する計画を明らかにするなど、中国の覇権拡大を念頭に、2国間同盟を多国間の防衛協力に発展させる意向が強く打ち出された。比日米豪4カ国合同哨戒の可能性も示唆された。
ガルベス比国防相代行は会見で「地域の同志国との将来的協力について議論した。比米だけでは幅広い安全保障の課題に対応することはできず、利益を共有する諸国との連携が必要だとの認識を共有した」と発言。「比米同盟はインド太平洋地域の平和と安定のためのものだ」と強調した。
オースティン氏は「今日合意された事項は比米2国間関係を『日本や豪州を含む』多国間ネットワークへ発展統合させる」とし、その上で「集団的抑止力を向上させるため、南シナ海において『同志国パートナー』と今年後半に合同海上活動を行うことについて議論した」と明らかにした。
比豪両政府は2月に南シナ海で合同哨戒実施に向け議論を始めることで合意している。一方、日本の海上自衛隊は昨年6月に南シナ海で護衛艦「はるさめ」が米海軍駆逐艦フィッツジェラルドと日米共同訓練を行うなど、近年南シナ海での活動を活発に行っている。
▽EDCA米軍配備は未定
比米防衛協力強化協定(EDCA)に基づき建設・計画中の、米軍による装備品の配置と米兵の巡回駐留が可能となる施設9カ所に「いつ、何人くらいの軍隊を配備するのか」という質問に対しオースティン氏は「まだ議論するのは時期尚早だ。ただ、配備時期と人数は両国の合意に基づいて行われる」と説明した。
「EDCA施設は台湾有事への対応力を高めるか」との質問に同氏は「EDCA施設は両軍の相互運用性の向上と自然災害などの危機に対応するために使われる」と慎重に回答。マナロ比外相は「施設は人道支援や相互運用性向上に使われるのが原則だ」としながら「その他の安全保障課題の対応にも使われる」と付け加えた。
EDCA施設整備に米国が1億ドルを支出する計画についてマナロ外相は「EDCA施設の『内部と周辺』への迅速な投資約束に感謝する」とし、米国による軍事インフラ整備が米軍利用施設の周辺まで及ぶことを明らかにした。また、オースティン氏は「23年米会計年度末(9月30日)までに実施される」と明言した。
比米相互防衛条約(MDT)を現在の状況に適合させ運用する指針となる「比米2国間防衛ガイドライン」について両国は議論の加速化で一致。策定されれば、日本における「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)と同様の機能を果たすとみられる。日本では冷戦下の1978年に策定され、安保環境の変化に合わせ97年、2015年に改定されているが、比ではこれまで策定されていない。
1951締結のMDTを巡っては、ロレンサナ前国防相が「発動条件があいまい」と主張し、条約の見直しまたは運用ガイドラインの策定を訴えていた。前国防相任期中の21年11月、次官補級の比米2国間戦略対話で、ガイドライン策定に向けた交渉を始めることで合意された。
今回出された共同声明では、両軍がリアルタイムで軍事機密を共有するための前提となる軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の年内締結のほか、昨年5月に米インド太平洋軍と比国軍の間で調印された海洋安全保障枠組み(バンタイ・ダガット)の実施細則の早期策定、昨年10月に発表された米国の外国軍事資金援助(FMF)プログラムを通じた1億ドルの防衛装備品資金を比空軍向け戦闘機の調達にも活用することなどが明記された。(竹下友章)