「EDCAは特定国に向けたものでない」 台湾緊張高まる中で国防省が声明
台湾で緊張が高まる中、比国防省が「EDCA施設は特定国に向けたものではない」との声明を発表
国防省は8日、台湾に近いルソン北部を中心に4カ所新規設置されることが発表された比米防衛協力強化協定(EDCA)に基づく米軍利用可能施設について、「EDCAは特定の国に向けたものではなく、比米で共同運用する施設であり、保管施設が主だ」との声明を発表した。蔡英文台湾総統の訪米に対抗し中国が台湾周辺で軍事演習を始めるなど緊張が高まる中で、中国への刺激を避けるための釈明ともとれる内容となった。
国防省は「EDCA施設は比側の招待に基づいており、決して『妨げのない』恒久的な基地ではなく、既存の国軍施設の再整備事業だ」とし「演習や緊急時での利用は最小限度だ」と強調した。
それに先立ち、中国外交部(外務省)の毛寧副報道局長は蔡総統がマッカーシー米下院議長に面会した6日、追加EDCA施設の配置が「中国をターゲットにしている」と指摘されていることについて、「周辺諸国は米軍が世界に残した混乱に目を向け、自国への米軍配備拡大が『取り返しのつかない重大な結果』をもたらす可能性を考えるべきだ」と警告。
その上で、新しい「軍事基地」の場所について、「多くの見識ある比人が台湾海峡における紛争の渦に比が巻き込まれるとの懸念を表明していることがこの問題を物語っている」とし「台湾問題は中国の内政問題であり、緊張を高めているのは台湾の独立派とそれを支援する特定の国々だ」と指摘した。「『自分を犠牲にして』他人のために火中の栗を拾うことのないよう望む」とも述べ、台湾危機に介入した場合の軍事的対抗措置を示唆した。
▽「比全土が米軍基地に」
一方、比下院ではカストロ下院野党院内副総務が5日、EDCA3条2項に「要請を受けた場合、自治体の所有・管理下にあるものも含めた公有地や施設(道路、港湾、空港)を米軍が一時的に利用できるよう比政府は支援を行う」との規定があることを指摘。「要するに米国が国内のあらゆる場所の使用を要求した場合、比は拒否できない」とし「これは比全土の米軍基地化を意味し、米軍の駐留・訪問に関する他の条約・協定よりたちが悪い」と批判した。
野党バヤンムナ(政党リスト)のネリ・コルメナレス元下院議員は声明で、施設に事前配備された装備品に対し、米軍が排他的な使用権、独自の処分権を有していることを規定する同4条を問題視。「核兵器が持ち込まれたとしても、比にそれを確認するすべがない」と主張した。
さらに、一方が破棄を通告しない限り同協定が自動的に延長されることを規定した14条4項について「期限切れ前の見直しや再交渉の機会がなくなる」として問題を提起した。(竹下友章)