改憲の動き本格化へ 憲法会議召集法案が委員会通過
下院改憲委員会で改憲発議のための憲法制定会議を設立する法案が承認された
下院の憲法改定委員会は2月27日、別々に提出されていた憲法改正会議召集を通じた改憲のための4法案を統合した法案を承認した。故マルコス元大統領をエドサ革命(アキノ政変)により追放し誕生したアキノ政権の1987年に制定された現行憲法を改定する動きが、故マルコス大統領の長男である現大統領の支持派が多数を占める議会で本格化している。
比憲法17条によると憲法改正会議は、上下両院議員の4分の3の賛成、有権者の12%以上による請願に並ぶ、改憲の発議のための三つの方法のうちの一つ。同条3項には全議員の3分の2の賛成投票により憲法改正会議を招集できることが規定されているが、同会議の構成などについての細則は定められていなかった。
今回委員会を通過した法案は、憲法(改正)会議の構成について、全国17地域から3人ずつ選挙を通じて選出された計51人の代表者と、正副大統領・最高裁長官、上下両議院から構成される会議により任命された40人の専門家の計91人としている。
40人の専門家の中には、性的少数者やインフォーマルセクターの労働者など各セクターの代表も含まれる。他には、経済、インフラ、保健、農業、情報技術、海外投資など各分野の専門家が任命される。
下院改憲委員会のルフス・ロドリゲス委員長は憲法改正会議の構成について「女性、高齢者、障がい者、被災者、農民、性的少数者、インフォーマル部門の労働者など各セクターの代表者が20%を占める」と説明した。
選挙を通じで選出される51人について、エルピディオ・バルザガ下院議員=カビテ州4区=は、今年10月30日に開催されるバランガイ(最小行政区)選挙で選出するよう提言している。
比憲法を巡っては、正副大統領候補が別々に選出されるため前政権のように正副大統領の協同が成立しない例や、大統領が副大統領にスライドすることが明確に禁止されていないなどの問題点も指摘される。
また、天然資源の探査、開発および利用に関する事業、および「公営事業」に対し、国内資本60%以上の企業しか受託できないとする憲法12条も外国投資を妨げると批判されることがある。
南シナ海レクト堆に埋蔵すると推定されている天然ガス田についても、中国との合同探査が模索されているが、憲法上の問題により実現に至っていない。(竹下友章)