「管制システムは比政府が導入」 日本は資金提供、誤解招く報道も 越川大使新年インタビュー
越川大使が新年祝賀会で年初のマニラ空港システム障害、比日防衛協力、大統領訪日などについて自身の見解を明らかに
越川和彦駐比日本国大使は18日の新年祝賀会で記者団へのインタビューに応じ、年初のマニラ空港システム障害、比日防衛協力、マルコス大統領訪日など重要問題について自身の見解を明らかにした。
―マニラ空港システム障害について、比民間航空局は国際協力機構(JICA)事業で導入されたシステムだとしている。
誤解がある。日本は資金を提供したのであり、システム導入の主体は運輸省、フィリピン政府だ。
日本のコンサルタントももちろん入り、運輸省や航空当局からの要請を踏まえて、コンサルタントサービスを提供している。しかし、決してJICA自身がコンサルタントを務めているわけではない。
日本のコンサル・専門家との協議のもと、あくまでも最終的には比政府が要望を出す。JICAは融資実行の前に、最終案の審査をする。しかしその審査は、基本的にはどういう機器やシステムを入れるかということではなく、環境への影響とか、社会的配慮のガイドラインとか、そういった基準に適合しているかということ。誤解を招く報道もなされているが、誤解のないようにしてほしい。
―この問題について、比政府から日本への協力要請はあるか。
運輸省からJICAに対し、システムが今後も機能するように、必要な支援を求める一般的な要請はあったようだ。ただ、いまは上下両院で調査を行っている段階。それが終わり、原因がはっきりした段階で、もう少し具体的な要請が出てくるのではないか。
―日本政府がその要請に応える可能性はあるか。
日本政府がJICAを通じてファイナンスした管制システムであり、非常に多くの方が迷惑を被り、残念な結果だったと思っている。日本政府が応えられる要請内容だったら、当然応えていくと思うが、まだ仮定の話だ。ただ、管制システムはメンテナンス、システムの更新というものはしなくてはいけないものだ。
―マルコス大統領の中国訪問のどんなところに着目したか。
比中関係については、第三国の立場なので、コメントする立場にない。ただ、重要なのは、南シナ海。ここは日本にとって極めて重要なシーレーン(国際水路)だから、国際法に基づいて、自由で開かれた状況が維持されることは日本にとって極めて重要な国益だ。
―中国がマルコス大統領に約230億ドルの投資約束をしたことについては。
それが何を意味するのかは知らない。われわれが準備しているのは、(大統領訪日に際し)日本からの投資とか、企業の進出がどうなるかということ。日本にとっても利益があるし、フィリピンにとっても利益がある。そこを今、日本人商工会議所の皆さんと相談している。大統領の訪日は絶好の機会。その際にできるだけ多くの企業が来てくれることを期待してお話をしている。
政府開発援助(ODA)については、現在それを詰めて議論をしているところ。しっかりしたものを作り、大統領訪日に合わせ両首脳間で合意や署名ができればと思っている。
―共同声明は出すか。
具体的なことは答えられないが、なんらかの文書は出るはずだ。マルコス大統領の初めての訪日で、今後の足掛け6年間の日本とフィリピンの関係を規定するものとなるため、当然事務的には準備している。しかし最終的には両首脳の判断だ。
―世論調査で5割の比人が安全保障で日本と連携すべきだと回答した。
日本のことをそれだけ信頼してくれて感謝している。日本は比沿岸警備隊(PCG)に長い間協力をしてきたが、引き続き日本の海上保安庁とPCG間の協力を強化・深化させていければと思う。
約80年前の戦争の惨禍を思えば、こういうかたちで比人が日本を信頼し、ある意味で頼りにしていただいているというのは本当にありがたい。この信頼をきちっと受け止めて、日本としてできることをよく協議をしながら対応していきたい。 (竹下友章)