ハリス氏の目的はEDCA交渉 逆らえばマルコス大統領「失脚」も?
元上院議員らが、ハリス氏訪比の目的をEDCA施設の増設交渉だと指摘
比シンクタンクの総合開発研究所(IDSI)は22日、ドゥテルテ政権で大統領報道官を務めた国際法の専門家ハリー・ロケ弁護士、元上院議員のフランシスコ・タタッド氏、元教育次官で親ドゥテルテ政党「比民主の会」(KDP)の名誉総裁のアントニオ・ブッチ氏らを招き、今回のハリス米副大統領の訪比をテーマとするオンラインフォーラムを開催した。
23日の英字紙マニラタイムズによると、タタッド氏はハリス米副大統領が「(2024年の)次期大統領選への立候補を検討している」と指摘。大統領選立候補を見据えた外交実績作りだと分析した。
その上で同氏は、ハリス氏の訪問の最大の目的を「比米防衛協力強化協定(EDCA、2014年締結)に基づく米軍利用可能施設の増加交渉だ」と指摘。「EDCAで『両政府により合意された場所』と表現されている『施設』は基地の婉曲(えんきょく)表現であり、EDCAは違憲だ」とし「もし戦争が勃発すれば、米軍は『合意された施設』を軍事基地として、比政府からの介入を許さず露骨に利用するだろう」と警告した。
▽協定を破棄したら
ロケ元大統領報道官は「もし比が相互防衛協定とEDCAを破棄すれば、米国は間違いなくマルコス大統領を失脚させ、親米傀儡(かいらい)政権を樹立するために動き出すだろう」と発言。「これは米国が複数の歴代比大統領を退陣に追いやったのと同じだ」と述べた。
独立外交の名の下、対中接近を図ったドゥテルテ前政権に比べ、マルコス現政権は親米路線に回帰したと言われる。しかしタタッド氏は「比の外交は前政権から転換したか」という質問に対し、「現大統領は『比に敵国はいない』と述べており、外交スタンスは変わっていないと思う」と回答した。
比憲法第18条25項では、上院が条約に批准した場合を除き、外国軍の駐留、外国軍基地、施設の設置を禁じている。EDCAは、比米相互防衛条約(1951年締結)、訪問米軍地位協定(1998年締結)の実施について定める「行政協定」として上院の批准を経ていない。最高裁は同協定について2016年に賛成10、反対4で合憲判断を下している。
主催のIDSIは、ハリス氏の訪比後、「現在の条件での相互防衛協定は、比が同意するか否かにかかわらず、比に米国やその同盟国のどんな戦争にも参加することを要求している。中国は比を侵略する気はないのだから、比が米国に主権に関する意思決定を委ねることにどんな利益があるのか」との意見を表明するなど、「中国寄り」の立場をとっている。(竹下友章)