「比の安保理入り支持を」 大統領が国連総会で演説
マルコス大統領が国連総会で演説。国連安全保障理事会選挙への立候補の意向を明らかに
ボンボン・マルコス大統領は比時間21日午前、第77回国連総会で演説を行った。その中で大統領は、ミンダナオ和平に触れ「比政府による平和を構築し新しい協力の道を切り開いた経験は、国連安全保障理事会の活動にも貢献できる」と主張。2027~28年の国連安保理事会の非常任理事国選挙への立候補を表明し、支持を訴えた。実現すれば、アロヨ政権期の2004~05年以来、22年ぶりの理事国入り。国際社会に対抗的な姿勢を取ったドゥテルテ前大統領とは異なり、国際社会と融和的な方向で外交実績作りを目指す方針が打ち出された。
大統領は冒頭で「紛争をもっぱら平和的手段で解決すべき」と定めたマニラ宣言(1982年採択)と、同年採択された国連海洋法条約に言及。さらにアジア人初の国連総会議長も務めたカルロス・ロムロ元比常駐代表が国連設立に際して発言した「このホールで人類が生き残るか、もう一つのホロコーストで全滅するかと決しよう」という言葉を引用し、平和への決意を強調した。
その上で、国際法を中心とする「ルールに基づく国際秩序と平和」の実現を訴えるとともに、「比は今後も全ての国の友好国であり、敵国はいない」と宣言。中国に対しては南シナ海における力による現状変更をけん制する一方、台湾有事の際に米国から期待される比の軍事支援についても距離を取った形となった。
また、大統領は「世界の生存に関わる課題」として①気候変動②先端技術の発達③地政学的リスクの拡大④世界の格差――の四つを提示。気候変動問題については「比は排出するよりも多くの二酸化炭素を吸収している一方、世界で4番目に気候変動の影響を受けやすい国だ」と指摘。先進国に対し「国連気候変動枠組条約とパリ協定の下で、(気候変動に)脆弱(ぜいじゃく)な途上国への技術移転などの義務を直ちに果たすよう」要求した。
先端技術の発達については「技術の発達で多くの問題が解決される可能性がある反面、既存の政治・社会秩序を崩壊させる危険もある」とし「われわれ統治機構はそれに対応しなくてはならない」と述べた。技術革新は労働節約や産業構造の変化による構造的失業を発生させるため社会構造を動揺させてきた歴史がある。
地政学的リスクの高まりについては「アジアではせっかく築いた平和と安定が、戦略的・思想的緊張の高まりによって脅かされている」とし、国連設立の理想を守り、これを「再定義しようとするいかなる試みも拒絶することが求められる」とした。
世界の経済格差については「知識・知的財産を途上国のキャッチアップのため開放しなくてはいけない」と技術移転の重要性を強調。また、経済開発を進める国際環境作りのため「戦争を終結し、正義を守り、人権を尊重する国際社会の連帯」の促進と、食糧安全保障への投資や第四次産業革命への対応などのための国際的取り組みの必要性を訴えた。(竹下友章)