「日米英豪との協力強化を」 台湾緊張激化で専門家指摘
台湾問題の緊張激化を受け日米英豪との関係強化に基づく安全保障能力強化を訴え
2日に米国政府ナンバー3のペロシ米下院議長が台湾を訪問、翌々週の14日にはマーキー米上院議員率いる議員団が予告なく訪台し蔡英文総統と面会したことで、中国が台湾周辺で過去最大規模の軍事演習を行うなど台湾を巡る緊張が高まるなか、比の専門家から米国との同盟強化や日英豪などとのパートナーシップの深化を求める声が上がっている。22日の英字紙スター電子版が報じた。
今回の中国の軍事演習について比シンクタンク「ストラトベースADR」のビクター・マンヒト代表は「中国が自国領と主張する領域を防衛するためにどれだけの攻撃性を見せるかを、比政府は見せつけられた」と解説。「中国は自分が設定したゲームのルールに他国を従わせるために力を誇示するという考えに基づき、外交シナリオを書いている」とした。
その上で同代表は「中国の台湾に対する軍事的威嚇は、中国と領土問題を抱えるフィリピンなど東南アジア諸国に加え、日本にも波及することになる」と予想。対策として「安全保障能力の向上という点で米国との同盟を活用すべきだ」とし、具体的には「比米防衛協力強化協定(2014年署名)の見直しも検討すべきだ」とした。
更に、比が管轄権を有する海域で活動する中国公船への対抗策として「沿岸警備隊の能力向上を進める必要があるが、短期的には共同海上哨戒を申し出ている国々とパートナーシップや同盟関係を強化することだ」と指摘。「日本、オーストラリア、英国や複数の欧州連合加盟国が、既に比との共同海上哨戒など海上法執行能力強化への協力を申し出ている」と述べた。
また、フィリピン大政治科学部のハーマン・クラフト学部長は「中国の外交の脚本はグレーゾーンと短期的利益に根ざしている」と指摘。今回の緊張激化から得られた教訓は「中国の軍事的プレゼンスへの対抗と、比の立場の主張に関して、より活発にならねばならないということだ」とし、その上で「中国と戦争しても勝てないという理由で中国に譲歩してしまうと、領土問題を中国側の視点から見てしまうという罠(わな)にはまる」と警告した。
南シナ海問題に関し、中国に厳しい態度を取ることに慎重だったドゥテルテ前大統領は「中国と戦争しても勝ち目がない」「米国が(領土問題で)軍事的に助けてくれる保証はない」と度々発言していた。(竹下友章)