「鍵はミンダナオにある」 南シナ海問題を念頭に議論
南シナ海を主とした海事協力ファーラム開催。駐米比大使や高木准教授らが参加
南シナ海(西フィリピン海)を巡るインド太平洋海域をはじめとする海事協力についてのファーラムが催され、中国を念頭に置いた外交政策について、フィリピンの大統領や外交、軍事を巡る対中政策のあり方など活発な議論が交わされた。
マカティ市で開催された12日の同フォーラムには、各国の大使をはじめ、ホセ・ロムアルデス駐米フィリピン大使や政策研究大学院大学の高木祐輔准教授らが参加した。
ロムラルデス大使は冒頭の挨拶で「南シナ海における中国との領海を巡る問題はフィリピンの非常に大きな外交課題だ。比政府は外交によって解決できると前向きだ」と述べた。
また欧州評議会の代表として参加したハナ・サディーバ駐比チェコ共和国大使は欧州連合(EU)の見通しを話し、「インド太平洋海域はEUにとって地政学的・地経学的に重要だ。台湾周辺の海域や南シナ海の問題は世界に与える影響が大きい。EUは東南アジア諸国連合(ASEAN)と安全保障や防衛面でさらなる協議を重ねて関係を深めていきたい」と語った。
オンラインで参加した高木准教授は「インド太平洋海域でどのようにして自由」を維持できるか、という内容で演説を行った。高木准教授は「フィリピン大統領、外交そして軍事が比の対中政策を左右する」と述べた。
また比日関係については「鍵はミンダナオにある。ミンダナオは比日関係だけでなく、比とインド太平洋海域の関係を考える上でも焦点となる。ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン成長地域(BIMP-EAGA)=同地域間での貿易や投資、観光などの経済協定地域=の重要拠点として、ミンダナオとパラワン島はASEANの中でも注目されている」と説明した。
高木准教授はまた「ブルネイ・ダルサアーラムを除いた三カ国で海上保安面の協定も締結されており、ミンダナオへの支援を通して日本が協力できる」。「海洋状況把握(MDA)=海洋安全保障や海洋環境保全、海洋産業振興に資する海洋に関連する多様な情報を集約・共有することにより、海洋の状況を効果的かつ効率的に把握すること=の面でも、この3カ国がさらなる連携を深めることができる分野であり、日本もさらなる支援ができる」と近隣諸国との協力の重要性も強調した。
日本はすでに交通網整備事業や海上保安の強化に加えてミンダナオ地方の紛争地域への支援も行っている。国際協力機構(JICA)は先月、ミンダナオ地方のバンサモロ自治区(BARMM)における和平プロセスの促進と経済社会インフラ強化・雇用創出に18億円の無償資金協力を行うことで調印した。(沼田康平、テラニかおり)