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「国民は分断の政治を拒否」 マルコス第17代大統領就任宣誓式

[ 1698字|2022.7.1|政治 (politics) ]

国立美術館で大統領就任宣誓式開かれる。ボンボン・マルコス氏が第17代大統領に正式に就任

(上)就任宣誓を行うボンボン・マルコス第17代大統領=6月30日正午ごろ、ロビーナ・アシド撮影。(下)ボンボン・マルコス氏の大統領就任宣誓式に先立って行われた祝福パレードに投入された比国軍の軍用車=6月30日午前、ロビーナ・アシド撮影

 首都圏マニラ市の国立美術館で30日、大統領就任宣誓式が開かれ、ボンボン・マルコス元上院議員が第17代フィリピン大統領に就任した。同美術館で正午ごろ、ビセンテ・ソット前上院議長が正副大統領選挙の正式集計の結果、ボンボン・マルコス、サラ・ドゥテルテ両氏がそれぞれ正副大統領に当選したことを宣言。その後、妻のルイス・マルコス弁護士、長男のサンドロ・マルコス下院議員、次男のジョセフサイモン・マルコスさん、三男のウィリアムビンセント・マルコスさんが見届ける中、マルコス新大統領は立会人を務めるゲスムンド最高裁判所長官に対し、緊張した面持ちで大統領への就任を宣誓した。宣誓後、感極まって涙するルイス夫人にハンカチを差し出す場面もあった。

 就任式には、フィデル・ラモス、ジョセフ・エストラダ、グロリア・アロヨの3人の大統領経験者とイメルダ・マルコス故マルコス大統領夫人も出席。マルコス元大統領政権時に国軍参謀次長を務めたラモス元大統領は、アキノ政変(エドサ革命)時に政変を成功に導き、また、アロヨ大統領は2001年の「エドサ革命2」当時は副大統領で、選挙を経ずにエストラダ元大統領に代わり大統領に就任した。比現代史に名を刻む4人が怨讐を超えてマルコス大統領就任を祝した。

 海外からも代表が参席。豪州からはデービッド・ハーレー総督、中国からは王岐山国家副主席、ベトナムからはヴォー・ティ・アイン・スアン国家副主席、日本からは林芳正外相が参席するなど各国の使節が新大統領就任を見届けた。

 ▽「父の偉業」を強調

 宣誓式後の演説でマルコス新大統領は「国民の家族、国家、将来に対する希望が反映され大きなうねりとなり、比の歴史上最大の得票につながった」とし、自身の就任を「歴史的瞬間」と表現した。自身が対立候補の攻撃をしなかったことに2度言及しながら「国民は分断の政治を拒否した」と述べた。

 大統領職について「重責を十分に理解しており、国民の助けが必要」としながら「この国がもっと貧しかったときに支援ががあろうがなかろうが、フィリピン独立以来の偉業を達成した人物がいる。そして彼の息子もそうなる」と述べ、元大統領の父親をたたえた。

 その後も父親の政権を「過去のどの大統領より多くの道路を建設した」「父の時代、国家を分断しようとする外国勢力の試みを打破しており、最も強固な批判者もこれを認めている」と賛美。インフラ建設や共産主義勢力対策における父親の実績を強調した。

 ドゥテルテ前政権に対しては、コロナ禍対応への大規模財政支援を評価しつつ「より多くの選択を国民に委ねる道がある」と指摘。「国民の決断に政府が口出しするのでなく、自主的な決断の後ろ盾となり、失敗したときは助け、問題解決のために必要なものを供給してくれたらと想像してほしい」と述べ、上からのリーダーシップでなく、多様な自己実現を支援したいという自身の色を打ち出した。

 ドゥテルテ前政権のインフラ投資政策については「父の後の歴代政権より多くのインフラを建設した」と評価し、「私は自分の業績とすることに関心はない。既に始まっているプロジェクトを予定通り完遂する」と述べた。

 また、新大統領は食糧自給率にも言及。自由貿易を行う先進諸国に対し「先進国は『お前たちはするな、自分はする』という方針を取ってきた」と批判し、先進諸国が自国の農業に与えてきた優遇措置を比農業も受けなければならないとした。

 教育行政については「教材の見直しが必要」と指摘した上で「これは歴史教育の話ではなく、基礎科目、科学、ドイツで行っているような職業教育の話だ。また、比がかつて有し、いまや失った国際言語能力教育にも重きを置く」とし、その教育相を兼務するサラ副大統領を「この使命に適した人物」と持ち上げた。

 マルコス新大統領は、1965~86年まで長期間にわたって大統領職にあった父の長男として、8~28歳までを大統領公邸であるマラカニアン宮殿などで過ごした。就任式後、同宮殿に移り、エドサ革命以来36年ぶりの「帰宅」を果たした。(竹下友章)

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