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4月5日のまにら新聞から

対中外交、汚職対策、人権問題 大統領候補が討論会で討議

[ 1246字|2022.4.5|政治 (politics) ]

2回目となる中央選挙管理委員会主催の2022年大統領候補討論会が3日開催された

 2回目となる中央選挙管理委員会主催の2022年大統領候補討論会が3日開催された。候補支持率トップを独走する故マルコス元大統領の長男ボンボン・マルコス候補は1回目に続き欠席したが、ロブレド副大統領、モレノ・マニラ市長、パッキャオ上院議員など他の主要候補は出席。対中外交、汚職対策、人権問題など重要論点について自身の政策を明らかにした。4日の英字紙インクワイアラーなど各紙が報じた。

 ▽ASEANでは合意不可

 中国の南シナ海(比名・西フィリピン海)進出問題についてはロブレド、モレノ候補らは「東南アジア諸国連合(ASEAN)の合意により対処するのは難しい」との認識を共有。

 ロブレド候補はASEANと中国の「南シナ海行動規範」(COC)の「早期策定は困難だろう」としながら、中国側の主張を退けた「2016年常設仲裁裁判所裁定をてこに、この問題で共闘するためASEAN各国を説得し、比が議論をリードすべきだ」と述べた。

 同裁定はロブレド候補も所属する自由党から大統領になった故ノイノイ・アキノ前大統領が提訴に踏み切り、同大統領の成果ともいえる。裁定を「ごみ箱行きの紙切れ」と軽視しながら中国に接近したドゥテルテ現大統領とは正反対のスタンスを取った。

 モレノ候補はASEANの枠組みではなく国連を通じた対処を提言。「大統領に当選したら国連総会で2016年仲裁裁判所裁定の追認を各国に求める」と述べた。

 また同候補は同海域における中国艦船の威嚇行為に「容認しない」と明言。「我々の海に無断で侵入する外国船があれば、海の藻屑にする」との過激発言も飛び出した。

 ▽政府調達は全面開示

 比でいまだはびこるとされる汚職問題について、モレノ候補は担当者の裁量権を制限するために技術の導入を進めるとの考えを提示。「政府関係者と交渉することなしに、機械的に納税できる仕組みを整備する」とした。

 対するロブレド候補は政府の電子化の促進に加え、全政府調達の開示請求なしに原則公開とするとした。ロブレド候補の属する副大統領室は3年連続で会計検査院から最高評価を受けている。

 ▽麻薬密輸業者は殺す

 ロブレド候補は「容疑者を殺害する政策は麻薬撲滅をもたらさないとの研究結果が出ている」と指摘。

 その上で、現政権は末端の使用者・売人を取り締まってきただけだとし、麻薬供給源の取り締まりと、リハビリプログラムの増強の必要性を訴えた。

 また「人権は固有かつ不可譲の権利だ。しかしこの考えは比人の間では馴染みが薄い」と発言。超法規的殺害が横行したとされる麻薬戦争が、一定の支持を得ている現実を嘆くような一面も見せた。

 一方、パッキャオ候補は「人権も大事だ」としつつ、ドゥテルテ政権の終わりが近づくにつれ「麻薬密輸も活発化しつつある」と指摘。その上で「麻薬戦争は継続する。使用者は殺さないが、密輸業者は殺す」とし、麻薬戦争における「標的変更」を明言した。(竹下友章)

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