「米国に比の軍事施設を提供する用意あり」 ウクライナ危機がアジア波及ならと大統領
ドゥテルテ大統領が、「ロシアのウクライナ侵攻がアジア地域に波及した場合、比の軍事施設を米軍に提供する用意がある」と発言
ロムアルデス駐米フィリピン大使は10日、ドゥテルテ大統領が「ロシアのウクライナ侵攻がアジア地域に波及した場合、あるいはアメリカを巻き込んだ場合、比の軍事施設を米軍に提供する用意がある」と発言したことを明らかにした。大統領就任直後に南シナ海の領有権問題で中国の主張を否定する仲裁裁判所の判決が出たにもかかわらず棚上げするなど親中政策を進めてきたドゥテルテ氏による安全保障をめぐる米国寄りの発言は異例。
ロムアルデス大使によると、バイデン米大統領が東南アジア諸国連合(ASEAN)の各国首脳を招待し3月28日に開催予定の特別首脳会議への対応について話し合った際の発言だという。ドゥテルテ氏は「(米国に)行くことができないかもしれないが、もし要請があれば比は1951年締結の比米相互防衛条約に基づき、米国が必要とする軍事施設や物資を提供する準備ができている」と語ったという。同大使は、「大統領は言及しなかったがパンパンガ州クラーク空港やサンバレス州のスービック港などの施設が対象になるだろう」とした。
クラークとスービックにはかつて米空軍基地や米海軍基地があったが、1991年に比上院で基地協定更新が認められず撤退した。その後、「訪問米軍に関する地位協定(VFA)」が結ばれて比米合同軍事演習などが比で行われてきた。ドゥテルテ大統領は麻薬撲滅戦争に対する米議会の批判などに不快感を示し、デラロサ上院議員が米入国ビザの発給を拒否された際に、VFA破棄を2021年2月11日に米政府に通告。しかし比政府は破棄の凍結を2回重ね、米政府からワクチンの寄贈などを受けて同協定の維持を決定するなど軍事協定をめぐる両国関係はぎくしゃくしていた。
しかし、大統領は、ロシアのウクライナ侵攻については、「プーチン大統領や習主席と築いた友情は大切だが、今ウクライナで起きていることはいわれのないことで、起きてはならないことだと分かっている」と語ったという。ロムアルデス大使は、「大統領は今回の紛争が比の経済に与える影響を非常に懸念している。私は今週、ASEAN各国の駐米大使とともにホワイトハウスの国家安全保障会議で会合を持ち、対ロシアの経済制裁や石油問題について話し合う予定だ」と付け加えた。
フィリピンは140カ国とともに国連でロシアのウクライナ侵攻を非難し、「国家の政治的独立と領土保全に対する軍事力の行使 」に対して 「明確な非難 」を表明している。
ロシアの侵攻により2月24日以降、数千人が死傷し、200万人以上の難民がウクライナから脱出したとみられている。(渡辺誠)