支持率の高さはSNS戦略にあり? ボンボン氏、選挙戦序盤を快走
ボンボン氏の高支持率はSNS戦略の成功? ロブレド氏ら他候補に逆転の可能性はあるか?
5月の大統領選に向け各立候補者が選挙運動を始めてから1週間、国家経済開発庁元長官5人を含むエコノミストら137人やカトリック教会の司祭・修道女ら約500人などロブレド副大統領の支持は着実に広がっているが、1月末時点の各社の世論調査ではボンボン元上院議員の支持率がいずれも大きく上回っている。
ボンボン氏はなぜ高い支持率を得ることができているのか? ロブレド氏あるいは他の候補者に逆転の可能性はあるのか?
ABS-CBN電子版はマルコス氏が1986年以降の複数政党制のもとで初めて過半数獲得による大統領になる可能性があるとした上で、ボンボン氏の高い支持率についてまず経験と人柄を挙げた。
ボンボン氏を支持する南イロコス州ナルバカン町のルイス・シンソン町長によると、ボンボン氏の人気は、30年近い政治キャリアと、マルコス家に対するバッシングが一因と考えられるという。「もはや誰もマルコス家のスキャンダルなど気にしていない。むしろバッシングが強まれば強まるほど彼の人気は高まるようだ」とし、「スキャンダルを除けばボンボン氏は十分な資質を備えている。副知事、知事、下院議員、上院議員を歴任し経験も豊富だ」と付け加えた。また、人柄については、「ボンボン氏はバッシングを受けても決して報復しようとはせず、黙って泥を被って時を待つ冷静な人物だ。また、地元の問題解決に尽力してきたことが多くの人に親しまれる大きな要因だ」と語る。
ボンボン氏の選挙戦略と支持率については、政治アナリストで元アテネオ政治学院院長のトニー・ラビーニャ氏が、「ソーシャルメディアを通じて、ボンボン氏が受け継いだマルコス家の負の遺産を修正し、マルコス家に関するポジティブなニュースを常に発信している。これによってマルコス家に対するネガティブなイメージが低減し、親ボンボン氏のコミュニティーが大きく成長することを可能にした」と指摘した。
また、デ・ラ・サール大セント・ベニルデ校のマーケティング専門家スティーブ・ムーア氏は、約180万人の登録者を持つマルコス氏のブログが国民に「普通の男性」として同氏を印象付けるのに役立っているとし、同氏が息子のサンドロと話す投稿を例に挙げた。
「彼らは自分たちが食べている料理について話しているだけで、政治について何ら語らない。これは多くのインフルエンサーと同じ手法だ」と説明。さらに、「他の候補者が力を入れているキャッチフレーズや政策に彩られた広告戦略に国民はもう飽きている。ボンボン氏はそれを極力抑え、SNSでの情報拡散を利用することで国民の目に映る自身を『再梱包』することに成功した」と付け加えた。
アテネオ・デ・マニラ大の開発研究プログラムディレクター、ジャイエル・コルネリオ氏は『再梱包』という手法に独自の解釈を加える。「ボンボン氏は比に大きな変化をもたらすことができる人物というだけでなく、救世主として自らをパッケージングしている」と仮定し、「キリストの復活になぞらえ、父親の築いた黄金時代に人々を導くといういわばファンタジーの主人公を演じている。もちろ偽情報を流したのだろう。輝かしい過去というファンタジーは、現在に失望している人々には魅惑的だ」と説明。「他の候補者は国民にもっと説得力のある将来像を提示しなければならない」と付け加えた。
調査会社パルスアジア社長のロナルド・ホームズ氏は選挙戦の現状を、「予測するにはほど遠い」とし、「今後の出来事次第で支持率の変化は十分あり得る」と語る。また、「選挙期間初期の調査で上位を占めた候補者が、必ずしも当選するとは限らないことは歴史が証明している。例えば、ソーシャル・ウェザー・ステーションの2015年12月の大統領選調査では、当時ダバオ市長のロドリゴ・ドゥテルテ氏の支持率は20%で4位だった。グレース・ポー上院議員とジェジョマル・ビナイ副大統領(当時)が、それぞれ26%で、トップを分け合っていた」と指摘した。
ウェブメディアラップラーはボンボン氏の支持率の変動性に注目。6か月前の支持率は3位でわずか13%だったことを指摘し、最近の高支持率はサラ氏主導の時流に乗ったものだと読み解く。最新のパルスアジア調査(1月19〜24日)によると、ボンボン氏の支持率はミンダナオ(66%)が最も高く、ビサヤ(53%)や首都圏(53%)よりもはるかに高い。
大統領選挙序盤戦で存在感と強さを示すボンボン氏だがその勢いはいつまで続くか。投票日まではまだ3カ月、何が起こるかはまだ分からない。(渡辺誠)