ウソはマルコス家の常とう手段 繁栄は借金で作られた幻想
我々経済学者は未来を予測するために過去を研究している。人は似た状況で同じことを繰り返しがちだ。フェルディナンド・マルコス元大統領はウソを多用した。彼は戒厳令を布告した理由についてウソをついた。公金を懐に入れたことはないとウソをついた。最大のウソは彼の治世下のうちの1965年から83年まで、国は「黄金時代」を迎え繁栄したというものだ。
マルコスは外国からの借金で経済成長を誘導した。65年に6億ドルだった国の債務が失脚した86年に43倍の260億ドルとなった。大規模公共事業が人々に発展の錯覚を与えたが、雇用創出や生産性向上に失敗した。見せかけの豊かさの陰で、国の競争力が失われ、借金漬けとなった。
マルコスの借金を返すのに30年かかった。タイとマレーシアは1人当たりの国民所得を65〜90年、10倍にしたが、比は3倍にとどまった。仕事不足から比人は、家政婦や単純労働者として海外就労しなければならなくなった。貧困の根はマルコスの治世にあったのだ。
親の世代が体験したマルコス時代の圧政を我々の多くが忘れている。言論・集会の自由が奪われ、逮捕状なしの拘束、拷問、暗殺が頻発した。
ボンボン氏は、マルコス家が持つ巨万の富について、判決を含め山のような証拠があるのに、1ペソたりとも盗んだものではないとウソをつき続けている。ウソはマルコス家の常とう手段だ。
ボンボン氏が大統領になったら、ウソと偽りの政治を行うだろう。彼の願いは国の課題を解決することではなく、父の汚名をそそぎ、一家の犯罪を無しにすることだ。
ボンボン氏は父の時代の「繁栄」を取り戻すと約束している。現状に疲れた人々はそのウソを信じるかもしれない。しかしそれは弱い経済、貧しい人々、抑圧された社会を生むだけだ。偏見を捨て、理性を持って大統領を選ぼうではないか。(17日・スター、経済学者アンドリュー・マシガン)